だが、相手の戦法を見定めると反撃開始。表情を変えぬまま、完ぺきな論法で淡々とバンソク病院を追い詰め、確実にダメージを与えていく。
どんなピンチでも強気なヒーローも魅力的だが、ジソブ演じるイハンはそのミステリアスな佇まいで視聴者さえも騙し、ハラハラさせたうえで一気に形勢逆転へと持ち込む。脚本の意図を深く理解したうえで、計算し尽くした“緩急”の演技で自らクライマックスを演出するその力は、韓国トップ俳優と言われるジソブならではだ。
ソ・ジソブの経歴…「ミサ廃人」が流行語に
1977年11月4日生まれ、満年齢で44歳のジソブが芸能界デビューしたのは1995年。身長183cmとスタイルもいい彼が、アパレルメーカー『ストーム』のモデルにソン・スンホンとともに選ばれたのがきっかけだった。
翌1996年、ドラマ「男女6人恋物語」で俳優デビュー。ハマる視聴者が続出した2004年のドラマ「バリでの出来事」で貧しく優秀な青年イヌクを好演し、一気に注目を集めた。
俳優としての転機は、同じ年に放送されたドラマ「ごめん、愛してる」(2004年)で訪れた。日本でも長瀬智也主演でリメイクされたこの作品で、ジソブは養父母に捨てられストリートチルドレンとして生きてきた青年ムヒョクを演じた。
生みの親への憎しみ、そして満たされない愛情を同時に抱いたムヒョクの人生は見る者の心を激しく揺さぶった。ムヒョクのファッションを真似たりドラマが頭から離れず何も手につかなくなってしまう視聴者が続出。韓国では、タイトル“ミアナダ、サランハンダ”の頭文字をとった「ミサ廃人」という言葉が流行するなど社会現象化。同年の演技大賞やベストカップル賞などタイトルを総なめにし、ジソブは一気に韓国トップ俳優の仲間入りを果たした。