古今東西の名著をひも解く教養番組「100分de名著」(NHK Eテレ)の10代向け夏休みSP「100分de名著 for ティーンズ」(毎週月曜夜10:25-10:50、NHK Eテレ)の放送が始まった。トルストイ「人は何で生きるか」を読み解いた第1回放送時には、「名著」ならではの物語の深掘りはもちろんのこと、司会を加藤シゲアキが、人気声優・花澤香菜、下野紘が朗読を担当するなどの豪華なキャスティングでも話題を呼び、SNS上でも幅広い年代からの反響が寄せられていた。本日8月8日(月)、第2回の放送を前に、長年「名著」シリーズで制作統括を務める秋満吉彦氏にインタビュー。名著の定義や今回の「forティーンズ」に掛ける思い、10代での読書体験などについて聞いた。
名著は現代を読む教科書である
ーー普段はどのような本を“名著”と定義し、番組で取り上げているのでしょうか?
よく「名著は現代を読む教科書である」というキャッチフレーズを使っているのですが、時間の流れに淘汰されてなお残ってきた古典作品の中でも、私達自身が生きるヒントを得たり、社会を見つめる目を育ててくれる本、というものがあります。例えば、400年前に書かれた「ハムレット」は、まさに今生きている私たちの悩みや、社会問題を映し出している。そのような、現代を生きる私達が学べる本、という基準で選んでいます。
生きづらさを感じている子は、物語の世界に逃げていい
ーー今回の放送は「forティーンズ」ということで、特に10代に向けた内容になります。どのような意図で選書されたのでしょうか。
まずは若い人が気軽に読めるもの、読むのに時間がかからないものという基準を設けました。特にトルストイの「人は何で生きるか」と「竹取物語」は、本当に数時間あれば読めてしまうぐらいです。あとは、自分自身が「10代の頃に勉強しておけばよかった」と思う生物学と経済学の分野から、ポール・ナースの「生命とは何か」と、バルファキスの「父が娘に語る、掲載の歴史。」が出ており、入門書にぴったりの良書だったので選びました。読書感想文に利用してもらえたら、なんて思いもあります。
そして、今回選んだ4冊には、分野はバラバラながらも、実は「命のかけがえのなさ」という、共通したテーマがあります。
ずっと心を痛めていた問題ですが、夏休みの終わりには学校が始まることに絶望してしまう、時には自ら命を絶ってしまう子どもたちがたくさんいます。どうしたら力になれるかわからないけども、番組というメディアを使って、少しでも彼らに寄り添えたらいいなと。
学校や家庭という狭い空間に生きづらさを感じている子は、物語の世界に逃げていいんです。そして、1回文学や書物を通すことで、視点を変えることができるかもしれない。名著を通じて、この狭い世界が全部ではないと感じていただけたらと思います。