演技を超えた綾野剛の涙
日本代表戦当日。初めての代表、そしてスカウトのチャンスが訪れた伊垣は、力が入りすぎてなかなかいつものプレイができない。焦る彼に亮太郎の声が聞こえてきた。「思い出せ!自分を見失うな!自分を取り戻せ!」。声の限りに叫ぶ亮太郎。その言葉に伊垣は覚醒し、見事にシュートを決める。
フィールドを駆け回り、敵をかわし、シュートを決める伊垣を涙ながらに見つめる亮太郎。その目は、ただ応援するだけでなく、伊垣にかつての自分を重ねて共に戦っている目だった。涙を拭うこともせず、彼に精いっぱいの拍手を贈る亮太郎に、見ているこちらも胸が熱くなり、涙が止まらない。
伊垣の活躍が認められ、移籍交渉は成立。歓喜に沸く亮太郎たちの元に高柳が現れ、亮太郎の手腕を認めた。が、これ以上スポーツマネージメントにはかかわれない、と告げる。それは既に約束していたこと。亮太郎は素直に受け入れる。
亮太郎は「サッカーをやめて、あんなにアドレナリンが出ることはもう無いと思っていた。でも、だんだんスポーツマネージメントは最高だと思えるようになった。誰かを応援するってこんなに幸せなんだな、って…」と、仲間や家族、かかわったアスリートたちに感謝していると述べた。そして、自分を拾ってくれた高柳に「社長のおかげです。本当に本当にありがとうございました!」と深々と一礼し、笑顔で去ろうとしたそのとき、高柳が呼び止めた。
高柳は亮太郎に「この世界を去る」「ビクトリーに戻る」という2つの選択肢を与えた。彼は昔の自分の気持ちを亮太郎によって思い出したのだった。高柳は亮太郎に会いに来た時点で、既に彼を許していたのではないだろうか。この仕事にもうかかわれない、と告げた後、亮太郎があっさり「はい」と言ったとき、一瞬「ん?」という表情を見せていたのだ。
自分からクビにしたのだから、素直に「戻ってくるか?」と言えばいいのに…とも思ったが、そこは社長としてのプライドが邪魔をしたのかもしれない。「どうする?新町くん」との高柳の言葉に、「ビクトリーに戻りたいです。また皆と一緒に仕事がしたいです」と感情を抑えきれず胸をつまらせ、涙ながらに告げる亮太郎。
この場面での彼の涙は“綾野剛の泣きの演技”ではなく、“新町亮太郎の男泣き“だった。綾野剛はこの作品で、常に“新町亮太郎”を演じていたというより“新町亮太郎”として生きていた。まるで実際に”新町亮太郎”という人物が存在しているような錯覚を覚える場面が何度もあった。だからこそ毎回視聴者はドラマを超えて感動し、彼と共に喜び、泣き、彼を応援したのだと思う。
早くも続編を望む声
亮太郎と共に、塔子と城も「ビクトリー」に復帰。また、亮太郎と高柳が決裂するきっかけとなった麻生健次郎も「ビクトリー」と再契約したようだ。そして、パソコンのキーを打つ亮太郎はまだ一本指ながらも、両手で打てるようになっていた。
番組終了後、「終わっちゃった…」「まだ涙が止まらない」「続編希望!」と、この先の亮太郎の成長を見守りたい、名残惜しいコメントがTwitterに次々と書きこまれた。ドラマは終わったが、今日も亮太郎たちは「ビクトリー」で、アスリートたちのために尽力しているはず―そんな余韻に浸りたくなる作品だった。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
TCエンタテインメント
発売日: 2023/02/03