――これからの家庭料理はどのような方向に進んでいくと考えていますか?
現代の家庭料理に、私は“一汁一菜”を提案しています。1人で暮らしている男の子であっても、ご飯を炊いておいて、みそ汁を作るだけですぐ食事ができる。
それだけで栄養価が賄えるんですね。ふるさとの親に電話しても「みそ汁くらいは作っているよ」と言えるし、それを聞いたら「ちゃんとやってるんだな」と安心すると思うんです。お料理が安心の土台になっているんです。
――作った料理で失敗だったり改善の余地があったりしたことはありますか?
料理に失敗はないので、お母さんたちが失敗したと言うことが私には不思議ですね。
私は、一汁一菜についてはもう味見はしないですね。みそは濃くても薄くてもおいしいし、みそに任せといたらいい。誰が作ってもおいしくなるんですよ。
日常的な料理には、作り手が味付けにこだわらなくてもいいと思っています。1つのものを、食べる人が好みに合わせて変えていっていい。味ってもっとぼんやりしてていいんですよ。
食べる量も年齢も好みも違うんだから、ばらつきがあるのが当たり前。家庭ならではの優しい味がしていたらそれでいいというのは本当だと思っています。
――今後の「きょうの料理」で伝えていきたいことはどんなことですか?
私が料理を始めた大学生の頃は、本物志向が強くフランス料理ならフランス人のシェフを呼んで直々に教わるのが当たり前のような時代でした。
それが、だんだん等身大の家庭料理の先生が現れるようになったんじゃないでしょうか。
ただ世の中を見ると、お料理が相当できなくなっていることに気付いたんですね。
そんなふうに、今は昔と土台が違うので、言い方が悪いかもしれませんが家庭料理が「地盤沈下」した時代。今までは常識だったことから教えていかないといけないなと思っています。
プロに教えるように「こうしなければならない」ということを教えるのではなくて、もっと当たり前のことから、みんながお料理をするということを評価しなければならないと思います。
加えて、今までは「何が食べたい」という食べる人が主役の時代だったと思いますが、大概、ただ食べたいものを作っても健康的な食にはなかなかならないですね。健康のバランスを考えるためにも、もっと「お料理をする人」に光を当てていきたいですね。
おいしいまずいだけではなく、お料理の向こう側にある生産者とのつながりや人々が集う場を大切にすることが、これからも日本の文化をつくっていくんではないかと思っております。
ほとんどの女性が、結婚したとき子どもができたときにはちゃんと家事をしたいと思っているんですが、ちゃんとできないのが現実なんですね。そういう人たちにどうやったらいいんだという方法を教えたいと思っています。
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