平野レミの著書「おいしい子育て」(ポプラ社)がこのほど、「料理レシピ本大賞2022」のエッセイ賞を受賞した。幼少期の二人の息子との思い出や、育児と仕事との付き合い方などが、47品のオリジナルレシピとともに綴られている本著。子育てに関して「強制させないで、好きなことをやらせる」ことの大事さを説いた。さらに、長男のTRICERATOPS・和田唱の妻である上野樹里については「餃子100個作ってくれた」と明かし、「樹里ちゃんの料理は野菜がいっぱいで胃もたれしない」と語る。また、亡き夫・和田誠さんへは「こんなに辛い想いをしたからには、来世では私が先に死んで“リベンジ”したい」との思いを明かした。
エッセイ部門入賞にしみじみ「天国の和田さんもきっと喜んでいる」
――料理レシピ本大賞のエッセイ部門に入賞した「おいしい子育て」は、1997年に発売された「笑顔がごちそう」(講談社)を大幅に加筆・修正した作品だそうですね。
そうなのよ。この本は、息子たちが子どもの頃に大好きだった料理レシピや子育てについての考え方とか、家族に関する色々なことを書いた本なの。今回リニューアルするにあたって、夫の和田(誠)さんのイラストが新しく追加されたり、帯の推薦コメントを息子(和田唱)が書いてくれたり、最後のページには嫁2人との鼎談が掲載されたりしたから、「家族みんなで作った本」って感じになってるの。そんな本ができて、天国の和田さんもきっと喜んでいるんじゃないかしら。
子育てで大事にした“強制しないこと”「好きなことは努力ではない」
――お伝えいただいたように、本著には子育てに関する体験談が数多く書かれています。レミさんが子育てで大事にしてきたことは何なのでしょうか。
あまり「勉強しろ、勉強しろ」と強制しないようにしてたね。和田さんは特に「ああしろ、こうしろ」と言わない人だった。うちの長男がまだ学生だった頃、明日から期末試験だっていうのに全然、帰ってこないことがあったの。で、夜遅くに帰ってきたと思ったら、ギターのパンフレットをいっぱい抱えて、ページをペラペラめくりながら「お母さん、どれ買ってくれる?」なんて言うわけ。それで私が「明日から試験でしょ!何言ってんの!」って叱ったら、そのまま勉強部屋に入っていっちゃった。しばらくすると静かになって、「ようやく勉強を始めたかな?」と期待してそーっと部屋を覗いてみたら、和田さんが持ってた古いギターを抱えたまま寝てたの(笑)。
慌てて「和田さん、大変! 明日から試験なのに寝ちゃってる!」って伝えたら、和田さんは「これでいいんだよ」って。それからしばらくして長男は、作詞作曲とボーカルをやるようになった。和田さんは「ほら見ろ。あの時、俺がギターを取り上げて『勉強しろ』なんて言ってたら、こうはなっていなかったよ。本当に自分の好きなことをできるのが一番幸せなんだよ」って言ってたわね。
――その結果、長男の和田唱さんはプロのミュージシャンになられたわけですもんね。
結局、好きなことって努力じゃないの。努力と聞くと、嫌なことだけど歯を食いしばって頑張る…みたいなイメージがあるじゃない? だけど、たとえば私だったら、料理にずーっと没頭して、はっと気が付いたら夜中の12時になってる…なんてことがよくあるの。本当に好きなことって、全然努力と感じなくて、時間が経つのも忘れちゃうものなのよね。