安田顕の静かだが熱い気持ちが込められた演技に圧倒される<PICU 小児集中治療室>

2022/10/12 11:40 配信

ドラマ レビュー

安田顕の涙をためた目の演技が胸を打つ

設立されたばかりのPICUは、植野、武四郎、綿貫、羽生の4人だけで圧倒的な人材不足。そんななか、発症から4時間も経過した少女が運び込まれてきた。同じ病院の救命医・東上(中尾明慶)や麻酔科医・今成(甲本雅裕)、小児外科科長・浮田(正名僕蔵)らも駆け付けて懸命な治療が行われるが、亡くなってしまう。

植野は、すぐに治療に携わったスタッフたちとミーティングを開いた。どうすれば少女を救えたのか意見を出し合う様子に、武四郎は涙があふれ、「どうしてそんな何もなかったように話せるんですか」と問い掛けた。

すると「次に同じことが起きたら必ず助けられるように、僕たちは経験を自分の血と肉にするために、話すんです。分析するんです」と植野。そして、PICUが道内の医師たちに周知され、医療用ジェット機が運用されていたら、助かった可能性があると語る植野の目は赤く、潤んでいた。

振り返れば、少女に心臓マッサージを行っているとき、「大丈夫、戻って来て」と繰り返し、「1時間たちました」と東上に止められたときに顔を上げた植野の目も涙に濡れているようだった。

これまでも多くの命と向き合ってきた植野の、小さな患者、そしてPICUにかける思いを、安田はおだやかな口調のままで、けれども魂のこもった目の演技で見せ、説得力を持たせた。その思いに触れた主人公の武四郎は、医者の仕事に向き合うことになるのだ。

タイトルがTwitterのトレンド入りするなかで、吉沢の泣きの演技と共に安田の演技に胸打たれた視聴者も多く、「ヤスケン最高」「底知れない表現力に感動しました」「ヤスケンさんの温かい人間力溢れる演技よ」などと反響が集まった。

今年はドラマへの出演が続いている安田。前シーズンの7月期は「初恋の悪魔」(日本テレビ系)で自称小説家の怪しい人物として登場し、4月期には「未来への10カウント」(テレビ朝日系)、1月期には「逃亡医F」(日本テレビ系)への出演と同時に主演ドラマ「しもべえ」(NHK総合)でアプリから現れた、ひとことも話さないおじさんに扮(ふん)して話題をさらった。個性的なキャラクターもなんなくこなすふり幅が見事だ。

本作での温かく包み込むような優しさを感じる雰囲気を醸し出している安田も目が離せない。

◆文=ザテレビジョンドラマ部