毎回役柄を完璧に演じて視聴者を満足させ、数々の賞を受賞。“信じて見る俳優”と呼ばれ、ときには“演技の神”と称されることもあるナムグン・ミンが主演を務める韓国ドラマ「わずか1000ウォンの弁護士」。第7話、第8話では、彼が演じるチョン・ジフンの、現在のひょうひょうとした姿とは別人のような検事時代が描かれた。彼の複雑な生い立ちや“1000ウォンの弁護士”となった哀しい理由も明らかになり、また、ジフンを絶望の淵に叩き落とした巨悪の裏金事件も視聴者は知ることとなって、後半のストーリー展開と事件の黒幕への関心を一気に高めた。
寡黙で陰のあった検事時代
このドラマは1000ウォン(＝約100円)で弁護を請け負う敏腕弁護士・チョン・ジフンが社会的弱者の味方となって奮闘する痛快リーガルドラマ。日本では「ディズニープラス」内「スター」ブランドで、毎週金曜土曜に韓国での地上波放送終了タイミングでエピソードが追加されている。(以下、ネタバレを含みます)
1000ウォンで弁護を請け負う弁護士・チョン・ジフンは、「事務所の家賃が払えない」と言いながらも、スーツや時計はかなりの高級品で、先日は捜査のために絵画を20億ウォンで買った。高級レストランではフランス語のメニューを読んで慣れた様子で振舞っていたし、知れば知る程、ナゾは深まる一方だ。
ジフンは実は、元検事で次期総理を確実視されているキム・ユンソプ(ナム・ミョンリョル)の婚外子だった。高校までパリで過ごし、母親の死後、韓国へやって来た。関係を公にはできなくても、ユンソプはジフンに愛を持って接し、ジフンは正義のために戦う父を尊敬し、憧れ、父と同じ検事になったのだった。
検事のジフンは今とは違い、髪を整えて黒のスーツに身を包み、狙った獲物には相手がどんな立場であろうと食らいつく、問題も多いが仕事ができる男で「瑞草洞の狂犬」と呼ばれていた。5年前、彼はソウル地検の検事として大企業の裏金事件を捜査している中で、ユンソプが資金洗浄に絡んでいることを知る。清廉潔白だと信じていた父の別の顔にショックを受けるが、彼は捜査をやめなかった。
ユンソプは息子の召喚に素直に応じ、この事件は政界を巻き込んだ大きな事件であることをほのめかした。そして、全ての責任を自分1人に押しつけスケープゴートにされると知ったユンソプは、資金譲渡の帳簿も後日渡すと約束したが、取り調べが終わった後、屋上から飛び降り亡くなってしまった。その直後、ユンソプの携帯に非通知の着信が。ジフンが出ると「まだですか？早く決めてください。キム・ユンソプ議員」と言って電話が切れた。その後、彼は諦めずに捜査を続けたが、帳簿も非通知の電話の主も見つけられず、真相は不明のままとなってしまったのだった。
ジフンを大きく変えた静かに燃える恋
この検事時代のエピソードでは、彼の恋愛も描かれた。裏金事件の発端となったJQグループ社長の裁判で、社長の弁護士として就いていた、ペク法律事務所のイ・ジュヨン(イ・チョンア)が、その相手だ。
検事と弁護士という対立した関係での出会いだったが、彼女は「罪を犯したら相応の罰を受けるべき。今回の裁判勝ってください」とジフンに言い、裁判に負けた方が酒をおごる、という約束を一方的に告げた。裁判はジフンが勝ち、2人は屋台へ食事に行く。ジフンは屋台に来るのは初めてで、干しダラも初めて食べた。他にも、自販機の紙コップに注がれた甘いコーヒーの味も彼女から教えられたのだった。その後もジュヨンのアプロ―チで2人の距離は縮まっていき、ある日、常にどこか陰のあるジフンの笑顔を見た彼女は「これで2回目。次、3回目に笑ったら私と付き合いましょう」とアピールした。
ある晩、ジュヨンは、屋台でひとり酒をするジフンを見かけ、酒に付き合う。裏金事件の捜査でどうやっても真相にたどり着けず失意の彼は無言で席を立ち、街をさまよった。そして道に寝て雨に打たれた。ふと横を見ると、ジュヨンが同じように寝転がっていた。しばらくそのまま彼女を見つめ、穏やかな笑顔を見せるジフン。「3回目、笑ったわね」とジュヨンは笑い、2人は付き合い始めた。
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