長澤まさみが主演を務める新ドラマ「エルピスー希望、あるいは災いー」(毎週月曜夜10:00-10:54、フジテレビ系)が、10月24日(月)にスタートする。「コンフィデンスマンJP」(フジテレビ系)や「ドラゴン桜」(TBS系)など、コメディからシリアスまで作品ごとに表情を様変わりさせながら女優として進化を遂げてきた長澤まさみの軌跡を辿る。
圧倒的ヒロイン力を発揮した10代
2000年1月、歴史ある「東宝シンデレラ」オーディションで、史上最年少グランプリを受賞した少女が世間を賑わしていた。当時12歳だった女優の長澤まさみだ。小学生とは思えない抜群のスタイルに大人びた顔立ち。その圧倒的な輝きに多くの人が魅せられ、誰もがきっと「この子は将来すごい女優になるに違いない」と確信したはず。
その予感は的中し、芸能界入りからわずか3年後、長澤は映画「ロボコン」で第27回「日本アカデミー賞」新人俳優賞を受賞。その翌年には映画「世界の中心で、愛をさけぶ」で、白血病治療の副作用により脱毛症になったヒロイン・亜紀を演じるにあたり、自ら申し出てスキンヘッドに。役作りに対する果敢な姿勢、それを作中では一切感じさせない繊細な心理表現が評価され、国内の名誉ある映画賞を多数受賞した。
おそらく現在30歳前後の人にとって、彼女は“青春の象徴”のような存在ではなかろうか。というのも、これまで長澤はさまざまなタイプの忘れがたきヒロインを演じてきたからだ。例えば、2005年に公開された、あだち充による名作コミックの実写映画化「タッチ」では、双子の兄弟・上杉達也(斉藤祥太)と和也(斉藤慶太)の幼なじみである浅倉南を好演。ヒロインの代名詞ともいえる“南ちゃん”の実写化ハードルは高かったが、臆することなくスクリーンの中で瑞々しく役を体現する長澤には有無を言わせない魅力があった。
長澤のヒロインとしての魅力が最大限に活かされた作品のひとつは、映画「モテキ」(2011年)の松尾みゆき役だろう。「世界の中心で、愛をさけぶ」以来の再共演となった森山未來が演じる、主人公・藤本幸世の前に現れる“殺しの笑顔をもつ女”。その異名通り、みゆきは恋人がいる身にもかかわらず、その悩殺スマイルで幸世の心をかき乱す危険な女性として描かれていた。一方で、計算高く見えて実は誰よりもピュアだと思わせる一面も。計算なのかそれとも天然なのか、判断のつかないギリギリのラインを長澤は極限まで攻めていたように思う。大胆なラブシーンにも体当たりで挑戦した同作は、彼女にとって転機になったことは間違いない。
シリアスからコミカルまで自由自在な演技力
そしてもう一人、深く記憶に刻まれているのが、2005年に放送されたドラマ「ドラゴン桜」(TBS系)の水野直美。三田紀房による同名漫画を原作とした本作は、経営難の私立龍山高校を超進学校として生まれ変わらせるため、元暴走族の弁護士・桜木健二(阿部寛)が落ちこぼれの生徒たちを東大合格に導くストーリーだ。
直美は小料理屋を営む酒と男にだらしない母親を軽蔑しているどこか達観した女子生徒で、それまでの長澤からは想像もできない冷めきった瞳が印象的だった。だが、桜木と出会ったことで少しずつその瞳に生気が宿っていく。最終的に和解した母親が病に倒れたことで東大受験は断念するものの、長澤は安定した演技力で直美の成長過程をじっくりと見せてくれた。
そんな長澤は、2021年版の「ドラゴン桜」にも出演。直美は一浪の末に東大に合格、桜木が設立した法律事務所で働く弁護士としてさらに成長を遂げた姿で帰ってきた。舞台は前作の龍山高校と同じく経営破綻寸前の龍海学園。桜木が東大合格を目指す生徒たちを指導するという基本的なストーリーも変わらない。だが、青春ドラマとしての色が強かった前作に対し、2021年版は生徒を取り巻く大人たちの権力争いがスパイスとして加えられたことで、“日曜劇場”感が前面に押し出された。
それに伴い、長澤の演技もより重厚感のあるものに。生徒たちの母校を守るため、龍海学園の売却を阻止すべく奮闘する直美の姿に胸を熱くした視聴者も多いのではないだろうか。また、時折見せる桜木とのコミカルなやりとりも印象深い。
また2018年のドラマからスタートした「コンフィデンスマンJP」(フジテレビ系)の“ダー子”としてもお馴染みだ。同作はダー子、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)という3人のコンフィデンスマン=信用詐欺師が、欲望にまみれた人間たちから大金を騙し取る様を描いた痛快エンターテインメントコメディ。長澤はこの作品で恥じらいを一切捨て、モノマネから顔芸、ギャグまで何でもありの弾けた演技を披露し、コメディエンヌとしての才能を一気に開花させた。
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