
映画「貞子DX」が10月28日(金)に公開される。かつて一世を風靡した「リング」シリーズにおいては、見たものを1週間後に呪い殺す「呪いのビデオ」の元凶として人々を脅かした貞子だが、本作ではSNSの普及による拡散力の強化に伴い、呪いの期限が24時間に短縮され、より現代に適応した貞子の恐怖が描かれる。また、貞子は今や映画の中だけの存在ではない。「日本怪談歌舞伎(Jホラーかぶき)」で「播州皿屋敷」のお菊と共演を果たしたり、公式チャンネル「貞子の井戸暮らし」を開設しYouTuberとして活躍したりと話題が尽きない。貞子がこのように日本で最も有名な霊といえる存在になったのは、いったいどのような戦略によるものなのか。映画やYouTubeをはじめ、貞子にまつわるプロデュース全般を担当する、いわば“貞子のマネジメント”担当、KADOKAWA・今安玲子さんに話を聞いた。
貞子が出てくると観客がわかっているからこそ、その先に何を見せるのか
今安さんが貞子に関わり始めたきっかけは、2012年に映画「貞子3D」のプロデューサーを務めたことだった。
「『リング』シリーズから約10年が過ぎ、映画「アバター」(2009年)の公開に端を発した世界的な3Dブームの中で、ビデオから出てくる設定を3Dで復活させたらどうなるか?という、技術ありきの発想から『貞子3D』が制作されました。『リング』シリーズがヒットしたことで、観客は貞子が出てくるとわかって観に来ているので、どんなに怖くしようとしても貞子の登場だけでは怖くならない。なので『貞子3D』以降の作品は、いわゆるJホラーではなくポップコーンムービーとして、貞子が出てくる先に何を見せるのか?を意識して制作しています」(今安さん、以下同)
キャラクター映画としてのシリーズの始まりともいえる「貞子3D」。その後も貞子をその時期の最先端カルチャーと掛け合わせていく試みは続き、劇場内でスマホと連動する仕掛けが話題となった「貞子3D2」、他作品とのコラボに挑戦した「貞子VS伽椰子」を経て、「リング」の中田秀夫監督が再度手掛けた「貞子」で、原点に立ち戻り一区切りとなった。

そして本作「貞子DX」では、DX=デジタルトランスフォーメーション、SNSの海へ放たれ拡散していく新たな貞子の姿が描かれる。監督は話題のテレビドラマを数多く演出してきた木村ひさし、脚本は「仮面ライダー」シリーズなどを手掛ける高橋悠也。「恐怖と笑いは紙一重」とも言われる通り、ホラーとコミカルが入り混じる演出が効果的な作品となっている。
またキャラの濃すぎる登場人物も印象的だ。小芝風花演じる主人公・一条文華は、IQ200の天才大学院生。彼女とバディを組むのは、川村壱馬演じる自称“王子様”占い師の前田王司。オカルトを信じず、沈着冷静に呪いのビデオの謎を解き明かそうとする文華と、惚れっぽいナルシストだがヘタレで、呪いに怯えまくる王司という関係性が何とも面白い。さらに池内博之演じる怪しげな人気霊媒師・Kenshin、黒羽麻璃央演じるガスマスク姿の謎のハッカー・感電ロイドらが脇を固める。

「並べてみたら、曲者だらけ(笑)。主人公含め全員「呪い」に対する向き合い方が違うんです。ホラー作品のステレオタイプでないキャラクターを作りたかったんですよね。今回は恐怖におびえながら事件を解決していくヒロインではなく、怖がらずに『呪い?何それ?』というヒロイン。それに対し、男の子の方が怖がっているという関係性もシリーズの中では新しいと思います」
貞子は「KADOKAWAがお預かりしている女優」、YouTubeは「大いなる大喜利」
2022年3月に開設された公式YouTubeチャンネル「貞子の井戸暮らし」は、既にチャンネル登録者数13万人を数える。映画に出演している女優である貞子が、ティーンの女子としてのオフの姿を見せるチャンネルという形で、日常風景や料理、ダンス、歌など様々な動画が投稿されている。

「2011年に貞子のTwitterアカウントを開設したとき、どうしたらより多くの人に映画に興味を持ってもらえるのか?と試行錯誤しながら生まれたのが、貞子の『どこにでもいる普通の女の子』の一面を見せる形でした。恐怖のアイコンというパブリックイメージとのギャップがある、かわいらしさや親しみやすさを受け入れてもらえた実感があり、その後は映画作品公開のたびに宣伝部が中心となって、『始球式』や『政見放送』といった貞子の企画動画を出していきました。YouTubeチャンネルの開設は、これらの発想の延長線上に生まれたものです」
YouTubeでは幅広い企画を展開しているが、その中でも特に反応が良いのは「貞子がかわいい動画」だという。「モーニングルーティン」「ナイトルーティン」「全力貞(「全力坂」のパロディ)」などの動画が好評だ。
今安さんは、YouTubeを「大いなる大喜利」ととらえている。
「映画の宣伝企画もYouTubeも、貞子がやらなそうなことをこういう風に見せると面白いよね、という点では『大いなる大喜利』。ただ、同時に『やらないこと』も決めています。いわば貞子は、KADOKAWAがお預かりしている女優なんです。だから実在の人間をマネジメントしているのと同じです。女優さんがYouTubeをやるとき、本業がYouTuberではないので、超えない一線がありますよね。貞子の特徴である喋らない、顔を出さないといった基本的なことに加え、言語化できないラインがあります。過激なことをやりすぎない、コラボ先を決める際の配慮などもそうです」
https://movies.kadokawa.co.jp/sadako-movie/
公式YouTubeチャンネル
「貞子の井戸暮らし」
貞子公式Twitter
@sadako3d
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KADOKAWA / 角川書店