4500種類を突破したガンプラ。それでも旧キットを作り続けるワケ
――大型店などに行くとそういった最新キットとは別に、初代ガンプラが売られているのを見かけます。42年前の古いキットをなぜ販売しているのでしょうか?
旧キットも実は購入率が高いんですよ。新しいユーザーさんにはレトロな感じがいいようで、手軽な価格(1/144 ガンダムは330円)で子どもに触らせるのにもちょうどいいと。年配の方は懐かしさで手に取ってくれます。「これ、作ってたなあ」って。当時の思い出って失いたくないですよね。昔のガンプラを手に取ることで幼少期に受けた衝撃が蘇るでしょうし。ガンダムやガンプラは、シリーズごとのファンの皆さまもいるので、初代だけでなく時代ごとのキットも商品として出し続けることで大事にしていきたい。そういう理由で古いキットも作り続けているんです。
――42年間作り続けて、今ガンプラは何種類ですか?
ガンプラ40周年(2020年)の時点で、4500種類(SD系含む)を超えました。
――ということは、それだけの数の金型が現存しているわけですよね?
そうですね。金型は静岡のバンダイホビーセンター(ガンプラの生産工場)に保管されています。全てマスターで、金型にはスペアがありません。マスターをレストアしながらずっと使い続けています。
初代ガンダムの金型は今も現役。そこにはあるゲン担ぎも
――初代ガンダムの金型が今も現役である。金型は伝統的に1セットしか作らないというのを聞いたことがあります。複製しないのはなぜですか?
第一にコストの問題があって、金型の製造には大変な金額が必要になるんですよ。それとは別に、私も社内で伝え聞く形でしかないですが、昔模型ブームのときに、とある模型屋さんが大量生産しようと金型を複製したら逆に在庫を抱えることになったらしいんです。それから模型メーカーの間では増し型は縁起が悪いとされているようですね。
――ガンプラは1988年から現在の4色成形になりました。この技術はバンダイの発明だと聞いています。
私たちは“いろプラ”と呼んでいますが、1つのランナー(組み立て前のパーツセット)に4色を入れる成形はバンダイが開発した特許技術になります。2色なら他社にもありますが、これなしで多色成形しようとすると、赤と青の2色ランナー、黄と緑の2色ランナーみたいにするしかなくて、それだとランナーの数が倍々に増えていき、金型もそれだけ作ることになります。それを1つの金型に集約したというのがすごいところです。
――キット開発における苦労や悩みはありますか?
苦労はほとんどなく、むしろそれも含めて楽しいですね。設計において昔は手作業ゆえの苦労はありましたが、今は3Dデータによる作業なので、それも解消されています。
――手作業ゆえというのは、作業量的な?
いえ、クオリティー方面の話です。以前は手で図面を引き、その図面から金型屋さんが木型を作り、石膏に当てて型を取り、それに銅金を流し込んで金型を作るという作業でした。これって図面を引く段階でセンスが出て、木型の段階でまたセンスが出る。上がりは職人さんの腕に左右されがちだったんですが、今は3Dで設計し、金型前にデータで検討できるのでセンスによるブレは発生しません。3Dプリンターで試作も出せますし、本当に便利な世の中になりましたね(笑)。
――最後に、今人気の「水星の魔女」に期待することはなんですか?
アニメ、ガンプラ、その他を含め、今の「ガンダム」を支えてくれているコア層が、ファースト世代と言われる「機動戦士ガンダム」を観ていたちびっ子たちだと思います。それと同じように今の小学生、中学生にとって「水星の魔女」がファーストガンダムになり、ガンプラに触れる楽しさを知ってもらえると嬉しいですね。
取材・文:鈴木康道