今から34年前の1988年に多くのディズニーファン、ファンタジーファンを魅了した、ジョージ・ルーカス原案、ロン・ハワード監督の映画「ウィロー」。同作の後日譚にして新章を開くオリジナルシリーズ「ウィロー」が、11月30日から配信スタートした。映画版で主役を務めたワーウィック・デイヴィスが、34年の歳月を超えて続投しているのも驚くべき快挙といえる。「ウィロー役は彼でなければ」という制作陣と俳優側のコンセプトやプライドがぶつかりあい、それが実に快く昇華されているのも魅力だ。(以下、映画版のネタバレを含みます)
ネルウィン族のウィローは農夫として働く一方、魔術師になることを夢見ていた。いつも通りせわしなく動いていたある日、川からダイキニ族の赤ん坊(エローラ・ダナン)がドンブラコドンブラコ。桃から生まれたわけではないので桃太郎とは名付けられなかったが、ウィローは魔術師からその赤子をダイキニ族に返すよう役割を命じられる。最初に出会ったダイキニ族に赤子を返せというのだ。
ウィローは家族を残し、仲間と共にダイキニ族に会う旅に出た。道中で新しい出会いがあり、新たな友情を築き、かと思えば生命の危機にさらされたり、魔女が出てきたりと、「まさしくアドベンチャー・ストーリー」的な展開に誘われる。赤ん坊を最初に預かったダイキリ族、バル・キルマー扮(ふん)するマッドマーティガンも実にりりしく描かれている。最初は嫌なやつだったが、いろいろあって友情を深める、お調子者だけど情に厚い、いわば王道のキャラクターだ。後半には敵の大将格を男の色気(褒め殺し?)で取り込んでしまう、プレイボーイでもある。
今回見ていて、このところどうしようもないほどの高まりを見せている猫ブームを先取りするようなシーンもあるのには胸がときめいた。キジトラ、おそらく10歳は超えているであろう、若干太めの猫を見て「君は素晴らしい。その目、そのひげ、キスしたいほどだ」とブラウニー族のロールが語るシーンだ。ブラウニー族の体にとって成猫の大きさは、人間の子どもにとってのライオンかそれ以上であろう。迫力ある「にゃあ」にたまげてロールが転がり、ビールのコップの中に落ちて酔っぱらうあたり、実にウィットが利いていた。「養老の滝」という昔話で、「あの水が全部酒だったならなあ」と飲んべえがつぶやくシーンを思い出す。
聞くところによると、ジョージ・ルーカスは1972年頃から「ウィロー」の原案を頭に浮かべていたそうだ。ワーウィック・デイヴィスとは1983年公開作品「スター・ウォーズ/ジェダイの帰還」の撮影で出会ったらしいが、以後、ルーカスの中で“「ウィロー」映画化プロジェクト”が急発進したに違いない。今では当たり前となったモーフィング(複数の画像や形状を別のイメージへ自然に変化させること)が初めて使われた作品とも言われており(米・アカデミー賞の視覚効果賞にノミネート)、2001年に「ビューティフル・マインド」でアカデミー賞監督賞に輝くロン・ハワードの初期代表作としても銘記されよう。
30日よりディズニープラスで配信が始まったドラマシリーズで、52歳のデイヴィスは驚くほどわれわれが知っているウィローの姿で再び登場したが、あらためて公開当時18歳の熱演を「ウィロー」映画版で堪能いただきたい。ちなみに、新作ドラマでは“女王”となったソーシャを演じているジョアンヌ・ウォーリーは公開当時24歳。こちらも面影ばっちりの姿で登場しており、今の姿も美しいが、屈強な兵士たちの中にいて際立つ類い稀なる美貌は、一見の価値ありだ。なお、そんな映画版もディズニープラス「スター」で配信されているので、ドラマが序盤のうちにちょっくらのぞいてみては?
◆文=原田和典
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