他殺→自殺→「病死」…
その5日後。亨が路上に停められた車から遺体で見つかった。遺書もあったため、警察は自殺と断定。しかし、発表された死因は「病死」。亨には過去に精神科への通院歴があり、それを隠すために遺族が「病死」を希望したのだという。だが、私たちは知っている。亨が拓朗と電話を終えた後、部屋のチャイムが鳴り、その来客と共に外出してそのままになったことを…。チャイムが鳴った時、「ヤバい。死亡フラグ」「出るな、出るな!」「行っちゃダメ!」と、その後の最悪の展開を予想したコメントがTwitterに並んだが、もちろん亨に伝わるわけもなく、視聴者の懸念通りになってしまった。
亨の葬儀にはマスコミが詰めかけ、大門のコメントを取ろうと躍起になっていた。その対応に追われていたのは斎藤(鈴木亮平)。すっかり大門の右腕化した斎藤に、弔問に訪れた村井は「引き返すなら今じゃないかなぁ?でないと、この先はもう戻って来れねぇぞ」と釘を刺して去った。
帰る途中で、村井は知り合いの記者に遭遇。「大門副総理の泣けるコメントが取れた」と、したり顔で再生したボイスレコーダーから聞こえてきたそらぞらしい大門のコメントに、村井の怒りはMAXに。レコーダーを地面にたたきつけ、粉々に踏みつぶしてつばを吐きかけたのだった。
村井、「ニュース8」のスタジオに乱入
そして「ニュース8」の本番終了直後。恵那がスタジオで打ち合わせをしていた時、セットに向かってパイプ椅子が飛んできた。衝撃音に驚いていると、パイプ椅子を手にした村井が入ってきた。
「ざけんなよ、テメェら! どいつもこいつも正義ヅラしやがって! 何が報道だ!」
そう叫びながら椅子をたたきつけてセットを破壊する村井。「高尚ぶってんじゃねぇぞ。このウソつきが!」。
スタッフの静止をものともせず暴れまくる村井にスカッとした。だが痛快なシーンのはずなのに、村井が暴れるほどに涙が止まらなくなった。何度ももみ消されてきた真実、「配慮」と言い換えられた忖度、都合が悪いモノは排除、そして、そんな繰り返しの中で諦めて消えてしまった情熱…村井の悔しさや哀しさ、もどかしさ、いら立ち、怒り、すべての感情が村井の大暴れから伝わってきた。
このタイミングで自分が亨を引っ張り出さなければ、彼は殺されずに済んだかもしれない…そんな自責の念もあったのかもしれない。「この人は、今までどれほどの感情を抑え込んで生きてきたんだろう…」。村井の“痛み”を突き付けられたようで、しばらく言葉が出なかった。
恵那も、暴れる村井の姿を見ながら涙を流していた。最近の彼女は、局側の人間になってしまったように見えたが、実はそうではなかった。先日、拓朗を打ちのめした、彼の取材を台無しにした報道も、実はギリギリまで恵那は抵抗していたのだった。自分の無力さを痛感し、以前のように飲み込みたくないモノを無理やり飲み込む生活に戻った彼女の体は悲鳴を上げていた。
「いっそ木っ端微塵に壊れてしまえばいい」。恵那が本当はしたくてもできなかったことを、「情熱が消えた」と泣いていた村井が今、目の前で行っている。恵那は村井に自分を重ねて、抑え込んできた「希望」への情熱に再び火が点いたのではないだろうか。村井を見つめる目に、最近感じられなかった光が宿り、凛とした顔が美しすぎた。
「あんなに大嫌いだった村井さんをここまで好きになるとは」「村井さんに泣かされた」など、村井の魂の大暴れに揺さぶられた視聴者続出で、放送終了後はちょっとした“村井シンドローム”状態となった。また、ラスト直前の新展開に「コレ、本当にあと1話で終われるの?」「最終回延長なし?あと3時間ぐらい見たいんだけど」など、最終回の展開を心配する声も多く聞かれた。
12月26日(月)の最終話で、恵那、拓朗、村井、そして斎藤が辿り着くのは「希望」なのか「災い」なのか…。
◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部
Happinet
TCエンタテインメント