一方、向井に感謝しているという共演者も。それは、イージス艦と貨物船の衝突事故の被害者・島谷秀彰(津田)の妻であり、防衛大臣・鵜城に対する傷害事件の被告人という難しい役どころに挑んだ田中。
今作の撮影について、田中は「皆さんの話を伺っていて、楽しそうな現場でうらやましいなと思いました。(演じた)島谷加奈子という人物はずっと悲しみの中に生きていて、演じていてもとてもつらくて悲しいし、周りに基本的に誰もいないので孤独でした(笑)。でも、法廷のシーンで竹野内さん演じる入間みちおと対峙(たいじ)する場面では、今まで感じたことがないような感情が湧き上がってきて、すごく貴重な体験をさせていただきました」と振り返る。
続けて「向井さんとは1シーンだけだったんですがあって、それが私のクランクアップのシーンだったので、『大変な役でしたね』って言っていただき、どこか報われました(笑)」と感謝すると、向井は優しくほほ笑みながら「良かったです」と応じる。
あらためて田中に声をかけた真意を聞かれ、向井は「台本を読んだときからすごく複雑でしたし、(加奈子は)ある種被害者でもあり加害者でもあるところがあるのですごく難しい役。感情的にもなるし、結構大変な重い役だなと思ったので…。クランクアップのシーンは僕も一緒だったんですけど、すごく感情を出さないといけないところで、暑くて体力的に大変な中、全力でやりきっている姿はすごく神々しかったので。そういう方にかける言葉ってなかなかなくて、シンプルに大変だったと思いますけど、僕はすごくすてきな役だなと思っていました」と声を掛けた理由を明かし、敬意を払った。
映画「イチケイのカラス」は、1月13日(金)より全国公開。
◆取材・文・撮影=ブルータス・シーダ
TCエンタテインメント