――獅子舞亘の人物像を教えてください。
僕がこれまで演じてきた刑事役とちょっと違っているのが、妻を亡くしたことの悲しみを娘と共有できていないということ。そこは結構つらいだろうなと。そういうことがあるからこそ、今回元村としっかりと正面から向き合えています。
――役作りはどのようにされましたか?
結構難しくてですね…。妻を亡くして、“父と娘二人暮らしの刑事”という設定は今まで何人もいたし、これまで僕が演じた役でも、妻も娘も殺されたりということもありました。なので、そういう意味で新しい引き出しをつくらなきゃいけないなと。
そこが難しかったのですが、あまり細かいことは考えないで、元村といる時の自分の自然な感覚で演じました。一か八かというか、手探り状態で現場に入りました。
演じ分けができているかどうかは正直あまり自信がないのですが、獅子舞のせりふの中で「人は誰だって、いくつもの顔を使って生きている」「大差ないんだよ」という話をするシーンがあって、その点は意識しました。
父親としての獅子舞と、刑事としての獅子舞、同僚といる時、部下といる時、聞き込みをしている時、相手によって表情を変えるということをしました。
――役作りするにあたって、普段から心掛けていることはありますか?
台本を頂いてその役を見た時から「どうやって演じよう」とか「あのせりふはどういう風にしたら伝わるかな」というのは常に頭の片隅にあるのですが、そうするとアンテナが勝手に伸びるんですよね。それで、ふとしたことで「こういう方法があった」というのはよくあります。
ドキュメンタリーもわりと参考にします。似たような題材の映画があれば見るし。でも今回は、竹内くん演じる元村がやっぱり一番のキーになるので、彼がどういう風に仕掛けてきても反応できるようにニュートラルな感じでクランクインしました。
――監督からはどのようなリクエストをされましたか?
えーと…リクエストはなかったです。とにかく、元村と会った時の自分の気持ちと、その瞬間に感じたものをしっかりと忍ばせておこうというか、それにしっかり向き合って、そこから作っていこうと思っていたので、特に「こういう風にしようかな」ということも相談しなかったです。
竹内くんとせりふをやり取りした時、衝撃だったんですよ。彼の、その元村という役がすごくパワーがあるというか。その時のまま、走り続けた感じです。
――では、監督もお二人の演技を見て、「これで間違いない」という確信を得られて現場が進んだ感じでしょうか。
そうですね…二人っていうよりも元村、なのかな(笑)。元村という役もそうなのですが、あのすごく難しい役に果敢にチャレンジしている竹内くんのその現場の居方もやっぱり素晴らしくて。現場を飲み込んでいましたね。
カブトくんについても、もう、愛おしさしか感じなかったんですよ。竹内くんがそれを引き出してくれたというのはあります。自分で作ったというよりも、もう会った瞬間に「あ~、かわいい!」って思っちゃったんですよ(笑)。
獅子舞が一番友達になったのが、カブトなんですよね。カブトがいなかったら、もしかしたらもうちょっと違う事件の取り組み方をしていたかもしれないなと思います。元村くんとの友情というよりはカブトとの友情でした。でもそれを作ったのは元村くんなので、不思議な感じでした。
竹内くん本人と話していると“男”なんだなというのは印象としてありましたが、もしかしたら本人に一番近いのはバクなのかもしれない。ただ、今回の彼の役作りの中では、どのキャラクターも暴力は振るわないというのは決めていたみたいで、乱暴するように見えるのですが、その中にもちょっと優しさがあったりするんですよね。
バクは、気が小さい分自分を大きく見せようとするキャラクターなので、そこは竹内くんに近いというのとはちょっと違いますが(笑)。
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