人気アニメ「文豪ストレイドッグス」の第4シーズンが始まった。“文豪”と呼ばれる人たち…簡単に言えば“昔の小説家”とでもいうのだろうか、原稿用紙に、西洋の人なら万年筆で横書きで、日本の人なら鉛筆か何かで縦書き。書いては書いては消し、悩んで悩んで書き足して、もう少しで出来上がるというところで“ダメだ!”とばかりに紙を破り捨てて締め切りを大幅に遅らせてしまい、部屋の隅で待機していた雑誌編集者は真っ青、というイメージが世間一般にとっての文豪であろう。今回は「文豪ストレイドッグス」にも登場する太宰治の現実の人物像と、アニメで太宰を演じる声優・宮野真守のエンターテインメント性について、エンタメ全般に幅広い知識を持つライターの原田和典氏に語ってもらった。
“文豪”たちの中で筆者が最も興味深く面白いと感じる人物こそ太宰治だ。彼が天衣無縫のユーモリストであったことは「お伽草紙」を読めばたちどころに分かる。
師・井伏鱒二の放屁を文章にしたためたことで起こった絶交騒動もたまらないし、芥川賞を巡る佐藤春夫への書簡や、同・選考委員の川端康成に対しての「刺す」もいかに太宰の感性が異次元であるかを示していて痛快だ。
そういった意味では2019年に東京・日本近代文学館で開催された「生誕110年太宰治 創作の舞台裏」は自分にとってはアミューズメントパークであり破綻人間のショーケースであった。だが、当然のことながら文章がめちゃくちゃうまくて、いまだに読むと1ページごとに「おお、これぞ生きた日本語。日本語のあるべき形」と唸らされてしまう。
前置きが長くなったが、そんな太宰をアニメ「文豪ストレイドッグス」では宮野真守という現代のエンターテイナーが演じている。同作は太宰、中島敦、芥川龍之介など実在する文豪の名を懐くキャラクターたちが活躍する、異能バトルアクション。朝霧カフカ・春河35により2012年から「ヤングエース」で漫画連載が開始され、関連書籍はシリーズ累計1200万部を突破した。
2016年に2クールにわたってアニメが放送され、2018年3月には映画「文豪ストレイドッグス DEAD APPLE(デッドアップル)」が全国170館以上の劇場で上映。2019年4月にアニメ第3シーズン、2021年1月にはスピンオフの「文豪ストレイドッグス わん!」、そして2023年1月4日よりアニメ第4シーズンがTOKYO MXほかで放送、dアニメストアやディズニープラスなどで配信中だ。
同作で太宰を演じる宮野は小学生の頃から芸能活動を行い、2001年に海外ドラマ「私ケイトリン」の吹き替えで声優デビュー。2022年も声優としてアニメ映画「バブル」のシン役、「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」のガンマ2号役などを演じるとともに、アーティストとしてアリーナツアー「MAMORU MIYANO ARENA LIVE TOUR 2022~ ENTERTAINING! ~」も成功に終え、俳優としてテレビドラマ「DCU」(ゲスト出演)、「石子と羽男-そんなコトで訴えます?-」「君の花になる」(以上、TBS系)にも登場するなど大活躍を繰り広げた。
最初に「第2回声優アワード 主演男優賞」や「東京アニメアワード 個人賞(声優賞)」に輝いたのが2008年のことだから、人気を獲得してからもかなりの歳月がたっているのは間違いないのだが、みずみずしさ、華やかさ、ともにハイレベルで保持されたまま、ここに「若きベテランの味わい深さ」的なものが加わって進化し続け、香り高さ・おいしさ満点なのが現在の宮野である。
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