民放公式テレビ配信サービス・TVer初の完全オリジナル番組「最強の時間割〜若者に本気で伝えたい授業〜」が無料配信中だ。1月13日(金)に配信開始となったLesson6では、作家の田丸雅智が20分でわかるショートショートの世界を熱く語った。
ショートショートは「短くて不思議なお話」
「最強の時間割 ～若者に本気で伝えたい授業～」は、さまざまなジャンルのトップランナーが特別授業を実施し、ラランドのサーヤとニシダ、櫻坂46のメンバー、そして学生ゲストが参加。トップランナーたちの授業がアーカイブされることで、TVerに「最強の時間割」が完成するというコンセプトの番組だ。
1月13日(金)より配信されたLesson6で教鞭を執るのは、“ショートショート”の第一人者として知られている作家・田丸雅智。普段はあまり聞き馴染みのないショートショートの知られざる世界をわかりやすく、且つ魅力的に解説する。
田丸は2011年、東京大学工学部大学院在籍時にショートショート作家としてデビュー。その1年後、「梅酒」(『海色の壜』所収)が樹立社ショートショートコンテスト最優秀賞を受賞し、ショートショートの旗手として注目されている。
そんな田丸曰く、ショートショートとは、簡単に言えば「短くて不思議なお話」を意味するという。具体的にはどんなお話なのか。今回のゲストである櫻坂46の大園玲は、田丸の作品をとあるドラマで見かけたことがある。それは田丸の原案による9つの物語をドラマ化した「ショートショート劇場『こころのフフフ』」だ。
大園が印象に残っているのはその中の一つ、同じく櫻坂46の山崎天が出演した「袖サロン」という物語。同作は、普通は伸びない袖がまるで髪の毛のようにぐんぐん伸びたら？という発想をもとに、袖のカットやカラーリングを請け負うサロンを舞台にしている。「のめり込んじゃうような不思議で可愛らしいドラマだった」と大園は振り返った。
もう一つ教材として紹介されたのが、ショートショート「大根侍」(『夢巻』所収)。主人公がある日、大根を持った侍から決闘を申し込まれ、師匠の元で修行したのちに大根を剣のように交えて対決。見事に勝利し、平和のために大根侍として生きる決意をするストーリーとなっている。サーヤが“コント”みたいだと語るこの物語を田丸が思いついたのは、新宿を歩いていた時に大根を素手で持ち、歩いている人を見つけたのがきっかけ。そうした日常における「なぜ？」「どうして？」という“違和感”をいかに拾い、膨らませていくかがショートショートの発想法だという。
教科書にも掲載中！ショートショートの書き方講座
田丸は全国各地でショートショートの書き方講座を開いており、講座の内容は小学校の教科書にも掲載されている。
今回はゲストたちがその一部を体験。ステップ1は、「不思議な言葉をつくる」。最初に「太陽」「タコ」「傘」など、好きな名詞を書き出したら、次はその中の一つから思いつくことを列挙する。例えば、「太陽」なら「発電に使える」「ぽかぽかする」など。最後に、「太陽」について思いついたことを「太陽」以外の名詞とくっつける。すると、「発電に使えるタコ」「ぽかぽかする傘」のように、耳にしたら違和感のある不思議な言葉になるわけだ。
不思議な言葉がつくれたら、ステップ2「想像を広げていく」。それは「どんなモノか」という説明や、「良いこと」と「悪いこと」を書き出していく。そして、最後のステップ3で書いたことをまとめ、作業は終了だ。
大園は「心のシュークリーム」と題し、シュークリームが食べたかったのに、「食べられない方のシュークリーム屋さんに来てしまった」という状況から始まる、独特だが可愛らしい印象の物語を紡いだ。田丸はシュークリーム＝食べ物という当たり前を覆した点に注目し、「（食べられない方のシュークリーム屋さんを訪れたことが）初めてではなく、“あーやっちゃった”という感じだから想像が広がる」と良かったポイントを挙げた。
サーヤは「チャンジャマン」というタイトルで物語を創作。おつまみ戦隊のセンターを張るチャンジャマンが、空腹の子どもに頭のチャンジャをちぎって差し出すも、「今は気分じゃないです」と断られ、イエロー＝だし巻き卵を羨むお話だ。レッド以外が人気を集める展開で、「ヒーローの定型をうまく利用している」と田丸を唸らせた。
ちなみに、この書き方講座は企業向けにも展開されており、新しい商品やサービスの開発に生かされていたり、少年院における更生プログラムの一環として役立てられている。そうした講座で、田丸は相手の想像力を萎縮させないよう、全てを肯定する空気づくりを心がけてきた。
