長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回はフットボールアワー・後藤輝基と新内眞衣が出演した2月1日放送の「旅する水曜日」(毎週水曜夜9:00-9:54、BS日テレ)をチョイス。
ジャンルに徹して面白い作品はカッコいい
ジャンルに徹した創作物というものが好きだ。たとえば映画では“ジャンル映画”なんて言葉があって、ちょっと説明が難しいんだけども、スリラーならスリラー、アクションならアクションと、ジャンルに忠実に作られている映画のこと。午後ローでかかっているような映画と言えば分かりやすいかもしれない。社会的意義があるわけでもなく、感動の涙を流すわけでもないけれど、ただ愚直に面白い娯楽。なるべくコストを抑えつつ、誰が見ても楽しめるよう作られたこの手の映画は、似通ったプロットが氾濫しているという事もあってか、大した話題になることも少なく、静かに消費されていく宿命を背負っている。
しかし、限られた予算や枠組みでどこまでやれるかというのはモノづくりの基本。金も場所も人員も足りない、しかし、演出とフィジカル次第で、何十億もかけた大作映画を超えるエモーショナルが産み出されることだってある。たとえそれがありきたりのものであろうが、ジャンルに徹して面白い映画を作る、その職人的な姿勢が何よりカッコよく思えるのだ。
日本芸能界のジャン=クロード・ヴァン・ダム
そんなタチだからか、フットボールアワー後藤がただ街ブラをするというような、ジャンルに特化した番組ばかり見てしまう。しかも浅草、一体これまで、何度テレビでブラつかれてきたのだろうか。その証拠に、番組冒頭では、雷門の前でYouTube撮影をしている綾小路きみまろと遭遇する。ていうか、ここがすごく良かった。こちらのカメラを見るのではなく後藤に向かい、同業者として、「あなたはねえ、うまいよやっぱり」と評して去ってゆく。ウソっぽさがなくて、なんかいいモン見たなという気持ちになる。きみまろと別れ、雷門をくぐる後藤と、進行役の新内眞衣、まったく気持ちのいい幕開けである。
そこから何か、スゴイことが起こるわけでもない。ただ、”街ブラ”というジャンルに忠実に従事し続ける。食べ歩きをするし、レクリエーションをするし、変わったお店に入るし、その土地に根付いたモノを食べる。言ってしまえば平坦な土壌だからこそ、後藤のフィジカルが活きてくる。日本芸能界のジャン=クロード・ヴァン・ダム、とりあえず放り込んでおけば面白くなるに違いない存在と言え、今回初めて知った新内眞衣という人も快活で明るく、一気に好きになってしまった。
やはり、最低限の要素だけできっちり面白く仕上げる作品というのは健康に良い。鑑賞後は肌のハリから何まで全然違う。こういう贅沢品を週に1度摂取できたらどんなに幸せかと思うので、この「旅する水曜日」は、「ウォーキングのひむ太郎」と一緒にチェックしていきたいと思います。あざした!