長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は「月曜から夜ふかし」(毎週月曜夜10:00-、日本テレビ系)をチョイス。
令和人間集「月曜から夜ふかし」
人気番組であることは知りつつも逆張り精神でこれまで見たことがなかった「月曜から夜ふかし」、水曜日のダウンタウンみたいなものだろう、くらいのイメージしか無かったのだが、実際に見てみてそのスピード感に仰天した。少なくとも私が見た回は街頭インタビューが主だったのだが、羅列に次ぐ羅列、ある種の開き直りも同居しているような、しかし貫禄を感じさせるような編集である。番宣の為のゲストなんてものもなし、出演者は村上信五とマツコ・デラックスのふたりだけ、このシンプルさというのか、大胆さというのか、私が7年ぶりにテレビを見るようになって、何となく感じていた現代テレビ番組の空気感を煮詰めたような番組だった。
しかし、何事もテンポの良いほうが面白い。TikTok、YouTube Shorts、スマホを置かず、1分程度の動画を連続で再生していくスワイプ時代、求められるのは常にテンポなのかもしれない。事実、この『月曜から夜ふかし』は、まるでShortsみたいに、次から次へと色んな人が写っては、ユニークな言動を見せる。笑いどころだけを集めたHUMAN BEST、ストレスがまったく無いんで、テレビでやってたらつい見てしまうのも分かる。私は帰省中の実家でこれをのんびり見ていたが、気付いたら番組が終わっていて、月曜から夜ふかしをしてしまった。
あと、写っている人たち、そりゃ、何人もの中から厳選されているわけだから当然ともいえるのかもしれないけども、この世にはこれだけ面白い人間が狭い範囲だけでこんなにいるのかという。ちょっと元気が出るというか、たとえばムスリムの方が好きなうどんを聞かれた際に「私いつも駅の380円」と言うのとか…「安いやつ」と答えるよりずっと会話が生きてくる。ユニークであったり、ドカンと面白いことが言えるというのもいいが、こういう些細な言い回しに気を遣えるユーモアが何より大事であるはず。こう言うよりはこう言ったほうが面白い、人生はこれの繰り返しだ。
令和人間集とでもいうべき、現代を生きる人間たちを1時間弱で過剰摂取できるマジコン『月曜から夜ふかし』。そのテンポの良さ、情報量の多さは現代に通ずる何かなのかもしれない。街ですれ違うあの人もこの人も、一体何を抱えていて、どんなユーモアを持っているのか分からない、我が生涯の友になれる人だって、街の雑踏には大勢いるのだろう。だからどうという話ではないが、しかし、みんな生きている。