元気なうちからやるべき“死”への備え
――松山さんご自身は、ご家族と介護については話しますか?
僕の親なんかは「大丈夫、介護いらない!」って言うんですけど、じゃあ動かなくなったら誰が面倒みるの?っていう。そこは、きちんとコミュニケーションとっていかないといけないなとは思いますね。「体がダメになったら、自分のお金で老人ホーム入るから」とかって言うなら、「あ、どうぞ」って思いますけど。何もしないで普通に生活している中で「自分は大丈夫」って言うのって、僕はちょっと無責任だなと思うんですよね。
――親御さんとしては、心配をかけたくないんでしょうね。
うん、そうだと思うんですけど、いきなり家族が死んで残された人たちって、財産分与とか、いろんなことがあるじゃないですか。そこで争いが生まれる可能性だってある。だから、終活みたいな……遺言をきちんと書いて、整理していくことは、元気な時にやったほうがいいですよね。ボケたりとか、死んでからじゃ遅いですから。僕は、それはやってます。
――30代で終活をされているとは思わなかったので、驚きました。
自分は今子育てをしているから、子どもを自立させるということが一番の目標なんです。だから絶対死ねないですけど、目標がなかったとしたら、別にいつ死んでもいいかなって思っちゃうんですよ。明日地震が起きて潰されるかもしれないし、津波に流されるかもしれないし、隕石が落ちてくるかもしれない。そうやって万が一自分が死んでしまったり植物人間になってしまったりしたときに、困るのは周りの人で。だから“備え”は今すぐにでもやらなきゃいけないなとは思ってましたね。
――お子さんとも、“死”については話したりしますか?
「自分は先に死ぬ」ってことは言ってあるんですけど、理解しようとしないですよね。でも子どもって、いいとか悪いとかは置いといて、虫をとってきたり、動物を飼ったり、命で遊んでいて。それが1つの学びなんですよね。虫を一緒のかごに入れておくと、共食いすることもありますしね。でも共食いって、実は人だってやってるんじゃないかって僕は思うんですよ。精神的な意味や、経済的な意味でも。
本作を通じて「どう生きたい」「どう死にたい」に向き合ってほしい
――今回、この「ロストケア」がどんなふうに届いてほしいですか?
まず、この作品を映画として成立させるっていうのは、かなり難しかったです。介護の問題を取り上げてるから、必然的に“死”が関わってくるし、観たくない、観なくてもいいっていうような部分の作品なんですよ。
――蓋をしておきたいというか。
そうなんですよ。「観てください!」って、わざわざ蓋を開けようとしてる作品なんですよね。だからすごく難しいとは思うんですけど、“知る”ことが備えの第一歩だと思うので。これからもっと高齢者が増えて、子どもが少ない状況になるので、この映画を通して「自分ってどう生きたいんだっけ?」「どう死んでいきたいんだっけ?」っていうことに、向き合っていただきたいなと思いますね。
■取材・文/石橋果奈
撮影/友野雄