ロバート・秋山竜次扮(ふん)する最先端のクリエイターに迫る「クリエイターズ・ファイル」。今回は、人里離れた山奥の古民家で“幻の逸品”を作り続ける米森健平さん(91歳)が登場。入手困難な「けんぺいじいちゃんのパテ」作りの裏側と、けんぺいじいちゃんの日常に密着した。
西麻布から東へ340kmほど車を走らせた秘境にその古民家が見えてきた。周りにはコンビニやスーパーなど都会では当たり前の日常がなく、西麻布のような都会から来ると不便に感じる。話題の名物、幻のおやつとも言われるそれを求めてその日も行列ができていた。
「友人から聞いてお店を知りました。毎月1日限定のマーブルもあるということですごく迷っています。今日は飛行機と電車を乗り継いできました」と話してくれたのは鹿児島から来られた主婦の末丸さん。
「ここのパテは食べ終わるとまた数分後には食べたくなって、禁断症状に近いものが出るんです」と笑顔で話すのは常連さん。
皆が買い求めるのは、けんぺいじいちゃんのパテ(健平食品)。厳選素材と伝統製法で作られたパテは、全てけんぺいじいちゃんの手作りで、その珍味は絶品だという。
けんぺいじいちゃんのパテを一度味わうと、他店のパテは食べられない、と皆口をそろえて言う。けんぺいじいちゃんのパテが“今最も入手困難な幻の逸品”と言われる理由の一つは、ほんの少量しか販売されないということ。全て一人で一つ一つ手作りされるため、販売数に限りがあるのだ。その上、半分は町のスーパーへ卸しているため、工房でけんぺいじいちゃんから直接購入できるパテはほんの一部だ。販売時間もまちまちで、一日数時間しか営業しておらず、SNS情報などは一切ない。そのせいか「運を天に任せて購入するおやつだ」と口コミされている。
「私の目の前で売り切れちゃったのですが、前に並んでいた方が少し分けてくださったので、食べられました。本当に感謝です」と目に涙を浮かべていたのは北海道・留萌からの女性だ。
今回、名物“けんぺいじいちゃんのパテ”の製造工程を特別に見学させてもらった。
――いつからこのパテを作られているのですか?
わしらの時代は贅沢はできんからにゃあ。腹減ったらようけ食べるにはやっぱパテなんよ。それも12歳の頃はもう無線の学校に通っとったきゃあ。腹が減られりゃ学ぶもんも学ばれりゃりん。ほんで自分でパテ作って食っとったっちゃて。うまいうまい言うてようわしに群がっちょったって。
――この原料は何ですか?
あんたが継いでくれるちゅうなら教えてやってもええけど。そりゃあそう簡単には教えれんがい。感覚やち。説明せえ言われても(笑)。
――後継はいらっしゃるんですか?
終わりやな。長いことやってもしょうがない。けんぺいじいちゃんのパテ食いたい~って思ってもろただけで死んでもええがい。
――いつかけんぺいじいちゃんのパテが食べられなくなると思うと寂しいです。
ありがとうございます。体力が続く限りは続けまりりゃあ。けんど日本全国にわしの弟子がおっていろいろやっとるがぎゃあ。しんぺい兄さんのパテ、大西おじさんのパテ、クリヤマ三兄弟のパテ、かずみお姉さんのパテクレープ、パテ酒場源ちゃん、ニック・ハーランのスパイシーパテ、万願堂のパテ大福、栄子おばあちゃんのきなこBOX、陳ファミリーのコーヒーちゃんぽん、KATSUMI師範代の油シャーベット、他にもいっぱいおるわい。
わしの代はおしまいやじゃ。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)