人を信じられなくなるというくらい心が不安定な人間
――氏真はどんな君主を目指していたと思いますか?
氏真は人に弱みを見せられず、自分がストイックにやればやるほど周りに人がいなくなって人を信じられなくなる、心が不安定な人間なんだと思います。氏真は人徳も才能もなかったので、家康のように人に甘えながらも自然と人が集まってくる人に憧れていたと思います。
僕も「ジュノン・スーパーボーイ・コンテストグランプリ」でデビューして、当初はアイドル的人気が出てたくさんのお仕事をいただいていましたが、そこに自分の実力が追いついていないことや、自分より実力のある方々がいることも実感し、どんどん抜かれていくような感覚になっていきました。自分には才能がない、自分の身の丈にあったものができていないという葛藤を抱いていた時期があったので、氏真を演じていて共感できる部分はありました。
氏真は早く乱世から降りたかったのだと思います
――第12回で今川が敗れますが、その時の家康に対する気持ちをお聞かせください。
「裏切り者、お前のせいで人生が狂ったんだぞ」と憎んでいた家康が、最後目の前に現れて戦うことになるのですが、演じていてホッとしている自分がいました。きっと氏真は早く乱世から降りたかったのだと思います。
家康と対峙する直前に「なかなかに…世をも人をも恨むまじ…時に合わぬを身を咎(とが)にして…」とうたいますが、それくらい自分は才能にも時代にも恵まれなかったと感じていたのではないでしょうか。家康は、ただ敵というだけでなく、幼少期の頃からの良い思い出もたくさんあって、本当の弟のように可愛がっていたと思います。お互いに手を取り合って父上を支えよう、父上を越えよう、今川家をもっと繁栄させようと、本気で考えていた仲だったとも思うので、最後は家康に一目会いたかったのだろうと演じていて感じました。
最終的に今川家は滅びてしまうのですが、父である今川義元や妻の糸など自分はこんなにも人に恵まれていたんだと気づくことができたんじゃないかと思います。