民放公式テレビ配信サービス・TVerにて、天海祐希、江口のりこ、田中圭、波瑠、福原正治、芳根京子の6人に焦点を当てた「俳優ドラマ特集」と、TVer恒例「名作ドラマ特集」が実施中。その中から、今回は4月スタートの新ドラマ「ラストマンー全盲の捜査官ー」(毎週日曜夜9:00-9:54、TBS系)で主演を務める福山雅治の過去作をピックアップし、今や日本を代表する俳優の一人となった福山の遍歴を辿る。
「ひとつ屋根の下」で大ブレイク
福山雅治には”エンターテイナー”という言葉が似合う。役者とミュージシャンという二足の草鞋を履き、どちらのシーンでも約35年に渡って活躍する福山。その才能に加え、高身長に整った顔立ち、色気のある声と、天から二物も三物も与えられた彼は誰もが認めるスターだが、おごり高ぶることは一切ない。自身がパーソナリティを務めるラジオや、ライブでも、軽妙なトークでいつも人を楽しませようとする根っからのエンターテイナーだ。
そんな福山のデビュー作は1988年の映画「ほんの5g」。当時若手スターとして活躍していた富田靖子の相手役として鮮烈なデビューを飾った福山は、その後まもなく役者として引っ張りだこになる。
特に「あしたがあるから」(1991年、TBS系)で連ドラ初出演を果たした1991年以降は数多くのドラマ作品に出演。妻を亡くした父親と年頃の三人娘が織りなす家族愛と、それぞれの恋愛を描く「愛はどうだ」(1992年、TBS系)では次女の恋人役を務めたほか、挿入歌も手がけたことで注目を集める。この頃から役者とミュージシャンの両軸で活躍する現在のスタイルは確立されていたのだ。
ブレイクのきっかけは、最高視聴率37.8%という今では考えられない数字を叩き出したドラマ「ひとつ屋根の下」(1993年、フジテレビ系)。このドラマは両親の死後、一度はバラバラになった6人の兄弟姉妹が集合し、ひとつ屋根の下で暮らし出すところから始まる。福山が演じたのは“チイ兄ちゃん”こと、次男の雅也だ。江口洋介演じる情に厚く真っ直ぐな”あんちゃん”こと、長男・達也とは対照的に、常に冷静でクールな雅也。しかし、その隙間から血のつながらない妹である小雪(酒井法子)への恋心をのぞかせ、視聴者を虜にした。
50歳の福山が演じる熱血漢が話題に
そんな福山の代表作といえば多くの人がご存知、人気ドラマ「ガリレオ」(フジテレビ系)シリーズだ。本作はベストセラー作家・東野圭吾の小説を原作としたサスペンスで、福山が演じたのは主人公の天才物理学者・湯川学。2007年10月期放送の第1作目では柴咲コウ、2013年4月放送の第2作目では吉高由里子が湯川の相棒である女性刑事役を務め、2人で事件のさなかに起きた超常現象を次々と解き明かしていった。
ドラマは両シーズンともに高視聴率を叩き出したほか、劇場版も制作され、昨年公開された第3弾「沈黙のパレード」は興行収入30億円の大ヒット。約15年にわたって続く人気は、湯川学という愛すべき奇人を作り上げた福山の好演に依るところが大きいだろう。
理系の人は冷たい。そんなイメージを覆したのが、福山の演じる湯川だったように思うのだ。非論理的な事象を嫌うがゆえに、非論理的な事象に直面した時はその謎を解き明かさねば気がすまない湯川。たしかに相当な変わり者だが、それは彼の誠実さでもある。決して無感情ではなく、「全ての事象には必ず理由がある」と信じ、真相を追究し続ける熱意が湯川に宿っていることを、福山はたしかに見せてくれた。
外見はクール、中身は意外にも情熱的という人間を演じさせたら彼の右に出る者はいない。しかし、そんな福山が暑苦しいほどの熱血漢を演じ、新境地を開いたのが2019年4月期のTBS日曜劇場「集団左遷!!」だ。このドラマは50歳を目前に、廃店が決まっている銀行支店の支店長となった片岡洋(福山)と、リストラ寸前の銀行員たちが協力して大逆転に挑む物語。福山が普段は全身に纏うカリスマ性を脱ぎ去り、組織の中で上手く立ち回ることができない、だけど会社や仲間のために一生懸命になれる、ごく普通のサラリーマンを好演した。そのコミカルさと哀愁が混じった福山の姿は、誰にとっても新鮮に感じられたのではないだろうか。
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