4月1日(土)より東京・紀伊國屋ホールにて舞台『ダブル』が開幕する。第23回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞し、WOWOWでドラマ化もされた野田彩子の同名漫画を原作とする本作は、天才役者・宝田多家良(和田雅成)と、彼の才能を見出し献身的に支える同じ劇団の役者仲間・鴨島友仁(玉置玲央)の関係性を軸とした心揺さぶるストーリー。演劇についての物語を演劇で表現するという意欲作に挑む2人に、役者から見た本作の面白さや、演じる役どころについて聞いた。
この世界に多家良を演じられる役者はいない?
――お2人は元々、原作漫画の「ダブル」はご存知でしたか?読んだときの感想を教えてください。
和田雅成 僕は役者仲間に「めちゃくちゃおもしろい」と勧められて読んだんですが、1回目に読んだときは、「僕はまだここに辿り着いてないな」と思って。自分が持っていなかった演劇の切り口が漫画の中で描かれていると感じました。
――今回ご自身で演じるとなって、読み返して印象は変わりましたか?
和田 そうですね、だいぶ変わりました。最初に読んだときは特に感情移入しようとしていなかったけど、多家良の目線で読んでみると新たに気づくことがあって、読めば読むほどおもしろいです。
玉置玲央 僕も周りの演劇仲間がみんな読んでいて。「『ダブル』読んでる?」「読んでるよ、当たり前じゃん」みたいな。友達で1人、「ダブル」について電話するくらい仲がいい奴がいるんですよ。そのくらい好きなんですけど、そういえばそいつに舞台の報告してないな…。
和田 そこまで話してて、なんで舞台の報告してないんですか(笑)。
玉置 怖くて!厳しいんです(笑)。そいつの言い分としては、この世界に多家良を演じられる役者はいないって言うんですよね。
和田 僕も漫画でそう思ってたんですよ!こんな子いないって!
玉置 でも演じる以上は、僕たちが多家良で友仁ですからね。そいつを黙らせるつもりで行きたいと思います(笑)。
「野田先生、俺を取材したのか?(笑)」
――今回、演じる役とご自身の共通点、逆にここが難しいというポイントを教えてください。
玉置 友仁は、誰かに尽くすことを苦もなくやれる人で、僕自身も、そこまでできているかはわからないけど、尽くすのは好き。境遇的にも、小劇場から着実にちょっとずつステップアップして今に至っているけど、爆発的に売れているかといったらそんなこともない。ジレンマを抱えつつ、真横で天才がバコーンと(売れて)いくのって、僕自身が何度も経験してきたことなので。だから友仁のことが好きだしわかるし、(舞台で)やるなら自分しかいないと思っていました。「野田先生、俺を取材したのか?」って思ってます(笑)。
難しいところは、今回の戯曲上では友仁の献身性を具体的に表現しているシーンが思ったより少ないんですよ。ノドのケアをしてあげたりマッサージしたりという場面はないので、今あるシーンやセリフの中での、会話のやりとりや佇まい、触れることや視線だったりを通じて、多家良への献身性や愛情を示したいなと思っています。
和田 僕自身が「多家良を演じられる人なんていない」と思っているように、多家良みたいな領域に辿り着いている人っていないと思うんですよ。だから自分と似ているところはないです。僕は何かにそんなに依存したこともないし、そんなに純粋でもない。でも、自分が持っていない部分が多いからこそ、役として多家良を理解できるのかもしれないと思って。
たとえば多家良って、皆といるときの会話のやりとりがちょっと変わってて。他の人が喋っていても友仁のことを気にしているから、話を聞いていなくて、取り繕おうとして変なことを言ったりする。そのリアルさみたいなものが台本にも結構あるので、徐々に理解して自分の中に沁み込ませています。
――では、玉置さんから見た和田さんと多家良の共通点は?
玉置 稽古場で見ていて、玉置としても友仁としても、「今は寄り添ってあげよう」と思うときもあれば、「今は寄り添う必要ないな」って思えるときもある。そういう雰囲気というか、言葉にできないものが自然に出ているところが、マサ(和田)と多家良の共通点なのかなと思います。こちらが頑張らないでも友仁としていさせてくれるというか。
――和田さんから見た玉置さんと友仁はいかがでしょうか。
和田 玲央くんはまさに友仁です。僕よりずっといろんな作品を経験していらっしゃって、 (劇中で多家良が演じる)チェーホフ「三人姉妹」のソリョーヌイという役も、玲央くんは演じたことがあるんです。僕、稽古で一度頭がパンクしたんですよ、どういうことなのか全然理解できなくて。そのときに玲央くんが「今はこうなってるから、こういうことで…」って全部説明してくれてる様が、傍から見たら本当に友仁と多家良だったと言われて。献身的な部分の押し引きが本当にうまくて、今必要なことかどうかを考えて、一番辛いときには必ず寄り添ってくれる感じが、僕にとっては本当に友仁ですね。
玉置 やめろよ~!(小突く)
和田 後でお金もらいます(笑)。
玉置 振り込みます(笑)。
舞台『ダブル』
2023年4月1日(土)~4月9日(日) 東京・紀伊國屋ホール公式サイト
https://www.nelke.co.jp/stage/double/
公式Twitter
https://twitter.com/st_DOUBLE_2023