DMM TVとABCテレビの共同企画として、ドラマ「サブスク彼女」が5月7日(日)深夜0:55より放送・独占配信開始となる。月額課金制で割り切った『彼女』を選べるサービスを運営する女性・トモ(紺野彩夏)と、その周囲の男女の複雑な関係や心模様を描くセンセーショナルな本作。新興VODサービスであるDMM TVとABCテレビのタッグはどのように生まれ、今後どんな作品を企画していくのか。そして、その背景としてテレビは今どのような状況におかれているのか。朝日放送グループホールディングス・コンテンツ開発局長の清水一幸さんと、DMM.com プレミアム事業部コンテンツ戦略兼オリジナル制作責任者の久保田哲史さんに聞いた。
――今回の共同企画は、元々お2人がフジテレビで先輩後輩関係だったことから始まっていると伺いました。どのような経緯だったのでしょうか?
DMM TV・久保田哲史さん DMM TVとしてはユーザー拡大のためにドラマコンテンツが大事だけど、キー局の作品を配信するのは難しいし、オリジナルで制作するのはリソースが厳しい。そんな中、関西の準キー局は深夜ドラマに力を入れていて、TVer見逃し配信もあって勢いがある。それで何か一緒にできないかという話を以前からしていました。
朝日放送・清水一幸さん それで、まず前クール「アカイリンゴ」(DMM TVにて独占配信中)の制作が決まったとき、すぐ(配信を)提案しに行ったんです。元々フジテレビのドラマ制作センターでプロデューサーとディレクターとして一緒に働いていたので、どんなクオリティのコンテンツを作るかはお互いが何となくわかっていると思うし、やりやすいかなと。
久保田 「アカイリンゴ」はすごく(再生が)回っているんですよ。
――「アカイリンゴ」は、性行為が違法となった近未来の日本を舞台とし、性描写が頻出する大胆な作品です。DMM TVでこちらを独占配信した狙いは?
久保田 VODサービスは完全にレッドオーシャン(競争が激しい市場)で、ブランディングが大事なので、オリジナルコンテンツを増やす必要がある。他社サービスでは女性ユーザーの比率が高い中、DMM TVは差別化として徹底的に男性をターゲットにしています。(原作が自社IPで)以前からファンベースがある「刀剣乱舞」をはじめとした2.5次元舞台の配信や、ユーザーのパイが大きいのでVODサービスとしては必須のアニメ作品を充実させるというところはありつつも、オリジナルコンテンツは男性向けを狙っているので、合っていると考えました。
清水 ドラマを制作する側としても、独占で見られる配信の場があるのはありがたいです。もちろん放送で見てほしいというのは表向きにはありますが、コンテンツ(作品)はとにかく見てもらうことが一番で、特に深夜ドラマだと配信視聴が圧倒的ですから。そこでどうせなら、1作品だけじゃなく継続的な取り組みとして共同企画を提案させてもらいました。
――今回、共同企画の第1弾として制作される「サブスク彼女」は、定額制の課金で『彼女』を選べるサービスを運営する女性を主人公とし、複数の男女の恋愛模様や性的な関係が交錯する群像劇です。なぜこの原作を選ばれたのでしょうか?
清水 男性ターゲットというところはありつつも、ドラマの視聴者は女性が多いので、女性にも見てもらいたい。エロに突出すると女性視聴者は避ける。でもMBSさんがやった「明日、私は誰かのカノジョ」が配信ですごく見られたように、女性側から見た性や、ダークサイドの物語には可能性があると思いました。「いるかもしれないな」という女の子の姿と、現代の悲哀がうまく合わさったような作品で、男性も女性も見てみようと思ってくれるんじゃないかと。
久保田 女性の性の悩みって、昔のように秘め事という感じではなくなっていますからね。「明日カノ」などがヒットしたのは、そこに興味のある人が多いから。それにサブスクは個人で見られるので、(過激な作品も)見やすい環境がある。これがどう出るのか楽しみです。
清水 僕はフジテレビ時代に「翼の折れた天使たち」(2006年)というドラマを作りましたが、「明日、私は誰かのカノジョ」はそれと同じような内容だったんです。「silent」も、耳の聞こえない恋人の物語って昔も見た記憶があるようにも思って。ドラマの流行は形を変えながら繰り返すもの。そう考えると「サブスク彼女」も「誰かの一番になれない子たちが心をなだめ合っている物語」として普遍性があるかもしれない。しかも地上波のゴールデンタイムでやるんじゃなく、サブスクで個人的に見るのが今っぽさがあるんじゃないか、と思います。