もちろん、“肉体改造”は鈴木の役作りの一側面にすぎない。他にも、たとえば2020年放送の日曜劇場「テセウスの船」(TBS系)では、連続殺人事件の罪で死刑囚となった人物を演じるにあたり、「人は過酷な環境で年月を過ごすと、何を思い、どう変わるのか。自分自身も発見を楽しみながら、人間というものと向き合っていける作品になるのではと期待しています」と、精神面で自らを追い込んだ。
公開中の劇場版の原点である日曜劇場「TOKYO MER―」で特筆すべきはやはり、手術シーンの器具さばき。完璧な手技を見せるため鈴木は当時、人工皮膚と“マイ鉗子”を持ち歩いて日々手術シーンの手元の練習をし続けたという。
その徹底ぶりは、医師役で共演する賀来賢人がインタビューで「僕たちもちょっと所作が分からなくなったら亮平さんに聞きに行くくらい、かなり準備されていて本当にすごいです」と語ったほど。鈴木はこのドラマで、「第109回ザテレビジョンドラマアカデミー賞」主演男優賞を受賞した。
肉体改造しかり、精神面や技術面での徹底した準備しかり。鈴木の役作りへの向き合い方に見え隠れするのは、さまざまな経験を経て今を生きるそのキャラクターの“歴史”を丸ごとリアルに表現しようという揺るぎない覚悟だ。
劇場版「TOKYO MER―」の公開に先立って行われた完成報告会では、「僕は大変なのが好きなんです。大変であればあるほど『楽しい!』『MERってこうだよね!』ってなるんです(笑)」とも語った鈴木。
演じるキャラクターの生き様そのものを表現するため誰よりも準備を重ね、過酷であればあるほど燃える。そんな強烈な役者魂を持っているからこそ、大河ドラマや日曜劇場といった伝統あるドラマ枠で求められ、多くの視聴者の心を打つ演技ができるのだろう。公開中の劇場版、ディズニープラスほかで配信中のドラマ「TOKYO MER―」で、国民的俳優・鈴木亮平のそんな魂の演技を目撃してほしい。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
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