コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、作者・竹良実さんの 『植物病理学は明日の君を願う』(小学館)をピックアップ。
植物病理学をテーマに、私たちのごく身近に潜む植物病の実態とその脅威に立ち向かう科学者たちの姿を描く本作。作者の竹良実さんが3月30日に第1話「災厄の箱事件<1>」を自身のTwitterに投稿したところ、7600以上の「いいね」が寄せられ反響を呼んだ。この記事では竹良実さんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。
かつて人類を飢餓に追い込んだといわれ、現代でも私たちの身近に潜む脅威である“植物病”。そんな植物病から人類を守るのが、“植物のお医者さん”とも呼ばれる植物病理学者だ。東京帝央大学の准教授で植物病理学者の叶木はある日、新米秘書の千両久磨子から急ぎの診断依頼を受ける。それは、静岡県のとある村で農家のミカン樹が謎の大量死を遂げたというものだった。
久磨子と共に村まで向かった叶木は、被害に遭った金丸農園に立ち入って話を聞くことに。感染がどう広がったかという時間の経過を見るため、村中のミカン畑の木々を地道に調べる二人。サンプルの葉っぱを大学に持ち帰り、病名を特定した叶木は、村のすべてのミカン生産者を集めて説明会を開く。
農家たちを前にして、診断名を“カンキツグリーニング病(黄龍病)”であると説明する叶木。さらに、グリーニング病細菌の感染の元となる媒介昆虫“ミカンキジラミ”の存在は農園内でまだ発見されていないものの、村中のミカン樹をすべて伐採、焼却する以外に方法はないと話す。
ざわつく農家たちとともに、久磨子はすべてを失う村民のことを想い悔しさを滲ませていた。すると、50年続けてきたミカン農家の一人が「証拠もなしに伐るなんてできない」と訴え、泣き崩れる。その姿を見た叶木は「人類が科学に基づいて行動するために、真実を獲ってくるのが科学者の仕事」と言い、夜明けをタイムリミットとして久磨子と共にミカンキジラミを探しに向かうのだが…。
植物病理学者の叶木と秘書の久磨子が植物病の原因を探り、科学の力と地道な研究で解決に導いていく姿を、スリリングなストーリー展開と華やかな画風で描く本作。Twitter上では「ドキドキした」「植物病本当に怖い」「勉強になりました」「引き込まれるようなキャラクター性」「農業経営者ですが一撃で引き込まれた」「植物好きはみんな読むべき」などのコメントが寄せられた。また「漫画を読んで新しい知識でニュースを読めた」「もっと学びたいと感じた」と植物病理学に興味を持つ読者も見られ、反響を呼んでいる。
――『植物病理学は明日の君を願う』を創作したきっかけや理由があればお教え下さい。
私は観葉植物や花を育てるのが趣味なので、植物の話を描きたいと思いました。はじめは「元気のない植物を治す花屋さんの話」を考えたのですが、調べる中で「植物病理学」に出会い、「これだ‼」となりました。
――植物病理学者の叶木准教授と新米秘書の千両久磨子、それぞれのキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか。
植物病理学の研究は地道な作業も多く、でも人類全体に関わる大きな意義があります。なので、一見地味な作業をしていてもヒーロー的なかっこよさや躍動感が出るように、叶木先生は思い切って漫画的な派手なビジュアルにしました。
久磨子は読者さんと驚きを共有する立ち位置なので、素直に感情を出すキャラにしました。今作は意識的にキャラに短所を持たせてあるので、彼らの人間らしさも含めてイキイキと描けたらなと思っています。
――私たち人間のごく身近に潜む脅威である“植物病”を題材にした本作ですが、竹良実さんにとって本作に込めた想いや「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。
漫画のために調べ物をしていると、ふだん食べている野菜や、自分には縁遠かった理系の学問、農業やそれを守るお仕事、など色々なことに興味が湧いてきました。単行本を開いていない時も、「あ、これ漫画にでてきたやつだ!」というように、日常のなかでちょっとした発見を楽しめるような作品になれたら嬉しいです。
――竹良実さんが本作を作画する際にこだわっている点や、特に意識している点があればお教えください。
ふつうは漫画の背景を描く時は「木」「足元の雑草」という感じで描くと思うのですが、今作は画面中でアップになる木や草花は、なるべく植物の種類を決めて描くようにしています。私自身はそれほど詳しくないので調べながらですが、植物好きの方は「この花は〇〇かな?」とか気づいて楽しめるかも…と思って描いています。
――本作の中で、特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか?
1話で、主人公の叶木准教授が笑顔で鼻血を出しているところです。農学や生物学者さんの本を読んで、生き物を相手にするような学問では「頭脳明晰」だけではなく、根気強さや行動力、その分野が好きという気持ちも大切なのかなという印象を受けました。それを叶木先生にも感じられるシーンかなと思います!
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
私にとっても知らないことばかりの植物病理学の世界、キャラクター達を通して一緒に驚いたり感動したりしていただけたら嬉しいです。また、物語としても波乱があり面白いものになると思うので、ぜひ読んでいただけたらと思います!
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