コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、作者・今井大輔さんの『デスラブレター』をピックアップ。
イオンシネマコミックで公開されている本作は、幼なじみへの一途な恋心を描いた読み切り漫画だ。今井さんが4月5日にTwitterに投稿したところ、6.4万以上の「いいね」が寄せられSNS上でも話題を集めている。この記事では、今井大輔さんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。
小学校一年生からの幼なじみである日野くんとネネちゃん。以前はいつも一緒にいるほどの仲良しだったのに、中学から二人はほとんど話さなくなっていた。7歳の頃からネネちゃんに恋心を寄せていた日野くんは、高校に入ってから勇気を出してネネちゃんに告白する。しかし、「何かの罰ゲーム?」「学校で一番モテるアンタが私なんかを選ぶ訳ない」とあしらわれてしまう。
毎日女子から大量のラブレターをもらう日野くんは、律儀にも全てに断りの返事を書くことから、それらの手紙は“デスレター”と呼ばれていた。そんな中、日野くんは「手紙ならネネちゃんへの気持ちを全部伝えられるかも」と考え、原稿用紙いっぱいに想いの丈を書き綴ることに。次の日の早朝、分厚いラブレターをネネちゃんの靴箱に入れようとしていると、思いもよらずネネちゃん本人に見つかってしまう。
意を決してラブレターを差し出し、あらためて想いを伝える日野くん。その真剣な表情に驚き、本心であることを理解したネネちゃんだったが、幼なじみながら学校一の憧れの的である日野くんの気持ちをすぐには受け止めることができず、「怖い」と言ってその場から逃げ出してしまい…。
幼なじみである二人の、長年胸に秘めていた一途でまっすぐな想いや葛藤する心が繊細に描かれた本作。心温まるラストシーンも話題を集め、Twitter上では「あったかいお話」「最高だー!」「感動しました」「優しい世界」「心が綺麗になる」「日野くんの愛の重さが最高」「なんか泣きそうになる」などのコメントが寄せられ、反響を呼んでいる。
――『デスラブレター』はどのようにして生まれた作品ですか?
しっかりとしたきっかけは無いですが、強いて言うならイオンシネマコミックの担当の方から連絡をいただいたことです。読み切り作品を描くことになり、打ち合わせを重ね、柔らかな中にも棘のあるものを描こうとしていたのですが、描いてみると棘のないふんわりな仕上がりになってしまいました。僕も意外でした。
――日野くんとネネちゃん、それぞれのキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?
まず、ネネちゃんですが、一般的なかわいいヒロインにしたくなくて、読み終わった時かわいいなと思える女の子になったらいいなと考えてました。どんな外見、年齢の女性も心の奥に持ってる”女の子”の部分が出たらいいなと思い、”恋する乙女”から遠いキャラにしたら「ぽっちゃりのおかんキャラ」になりました。
日野君も、ネネちゃん同様、学校一モテるイケメンと言われてイメージするものから離れてみようとしたら、一途に片想いを貫き、敵を一切作らない男になりました。
――まっすぐに想いをぶつける日野くんに葛藤するネネちゃんなど、二人の感情を繊細に表した表情描写が印象的ですが、作画の際にこだわった点や「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。
今作に限らず、喜怒哀楽、以外の名前のない感情を描きたいと思ってるのですが、言葉にならない感情の間を描くことがよくあります。感情が次の感情に向かうまでの心が処理してる表情を入れて、感情がスムーズに流れるように意識してます。
仕事の打ち合わせも電話が増えたのですが、対面で打ち合わせすると、打ち合わせの質というか、密度が全然違います。言葉のやり取りの間の表情って思ったよりもコミュニケーションに置いて重要なんだと思ってます。今作でも感情の間を感じてもらえるとうれしいです。
――本作の中で特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか?
ネネちゃんの「なんで私なの?」「なんで他の人じゃないの?」という問いかけに対して日野君の「ネネちゃんだから」「ネネちゃんじゃないから」という返答です。頑なな人を納得させる、反論の余地のない言葉を考えたらこうなりました。気に入ってます。
――今井大輔さんはこれまでにも男女の愛憎劇を描く『恋と地獄』や、マッチングアプリを題材にした苦く切ない出会いの物語『ビターコネクト』など、“男女”をテーマにした様々な物語を描かれていますが、創作全般においてのこだわりや特に意識している点があればお教えください。
前の質問の答えと重なりますが、名前のない感情を描きたいというのがあります。それを描くのに恋愛を含めた男女のやり取りが、共感を含めて伝わりやすく、名前のない感情がたくさん生まれるシチュエーションだと思ってます。
読後感も、ハッピーエンドとははっきりとは言えない感情になる、すこし悲しかったり切なかったり、でもまあよかったね…みたいなのが好きです。たぶん、俳句の感覚です。
――名前のない感情を繊細に描く作風は、今井大輔さんのデビュー当時から変わらないことのように思います。初期短編集『モノクロイエスタデイ』では、親友の彼氏に想いを抱く女子高生の物語『オセロ』をはじめとしてデビュー作、受賞作、未発表作が収録されていますが、それらの作品や当時を振り返って今だからこそ感じることはありますか?
やりたいことに向かって必死でもがいてる感じがします。実際もがいてた当時の感覚を思い出して、懐かしくて、あつくるしくて、盲目的で、面倒臭い気持ちになります。でも、今、この頃みたいに必死にもがく力がまだあるんだろうかと、妙な焦りも感じます。たまに見返すのは良いなって思います。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
読んでいただいてありがとうございます。勝手に描いて投げたものを、好きだと言ってくれる方たちには感謝と、親しさを感じてます。自分の中にあるものを種にして創作するので、それを気に入ってくれる人達は、同じような人なんじゃないかな、と。
一緒に楽しんでこの時代を生きていきましょう。これからもよろしくお願いします。
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