「ワタシ、どう考えても幸せなんですよ」
ある日、若林は、「話がある」と春日の部屋にやって来た。いつまでも全く売れなくて、自分が向かってる方向が合ってるのか、そもそもどこに向かってるのかもわかってない。ツラいし、しんどいし、みじめで苦しい。恥ずかしい。スゴくイヤだ…と本音をぶちまけ、「もぉやめた方がいいんじゃないかな、ってオレは思ってる」と告げた。
黙って聞いていた春日が「あの…ワタシ…」と口を開いた。そして「どう考えても幸せなんですよ」と告げた。危機的状況なのに、ネタも作らず、打開策も考えない春日からの予想外すぎる返事。面食らって「今が!?」と確認する若林に、「はい。だから、これからも頑張りたいんですけど」と言う春日。そして「不幸じゃないと、努力ってできないんですかね?」と続けた。やめるにしろ、続けるにしろ、若林にまかせる、と、とことん人任せな春日に呆れ、若林は帰った。
若林がドアを閉めた途端、テレビを点け、さっきまで観ていたライオンズ戦に夢中になる春日。この切り替えの早さはある意味才能だ。悩みすぎる若林と悩まなすぎる春日、そして若林がいくらキレても言い返さない春日―2人揃って地の底までヘコむ事も無ければ、ケンカになる事も無い。本当に良いコンビだ。
紆余曲折あり、若林は芸人を続ける事にし、春日もそれに従った。そして、ここから数年後、彼らは人生大逆転の大ブレイクをするのだが、「テレビにいっぱい出れたら幸せ」と思っていたのに、夢が叶った2009年の若林は「楽しくないんだな、テレビって…」と感じていた…。
◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部
※高橋海人の「高」は、正しくは「はしご高」
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