コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は漫画・イラストを描けるナカマチさんが描いた、とあるアイドルたちの旅路「波打ち際のラストソング」を紹介したい。解散を決めた2人組アイドルが、ファンからの報せをきっかけに旅を決意。その結末と彼女たちの選択には、多くの読者から「100万回いいね押したい」「胸があったかくなったわ」といったコメントが相次いでいる。
解散を決めていた2人に、思わぬ報せが…
アイドルユニット「リリカル・サマー」のエリカとナツミ。結成10年と長期に渡って人気を博してきた2人だが、アラサーに差し掛かってくる年齢や人気の低迷を受けて内々で解散が決まっていた。しかしライブ後のチェキ会で、イベントには必ず足を運んでいた古参ファン「たま子」が半年前に亡くなっていたことを知る。
結成直後から2人を応援し続け、名実ともに最古参のファンだったたま子。彼の訃報を知らせてくれたファンによると、彼はリリカル・サマーのライブがあった翌日、心臓発作によってホテルで亡くなっていたという。少なからぬ責任を感じた2人は、解散前にたま子の実家で線香をあげようと決めた。
エリカの謎スキルによって、たま子の死を知らせてくれたファンの身元を特定した2人。それからは芋づる式にさまざまな伝手を頼り、たま子の実家を突き止めることに成功する。元々あまりウマが合わず、プライベートではさほど交流のなかったエリカとナツミ。それでもたま子の実家があるという北海道へ行く道のなかで、自分たちのこれまでの活動や、自分たちを応援してくれたファンへの気持ちを振り返っていく。
アイドルとして駆け抜けてきた2人の最後の選択には、読者から「すごく考えさせられる」「ビターな結末だからこそ、余計にリアル」「“推し活”中の自分に重ねながら読んじゃった」といった声が続出。ドラマチックではないからこその感動を覚えた人が多かったようだ。
あえてドライに描かれた「客観的な物語」
――本作を創作したきっかけや理由があればお教えください。
自分の周りで若くして亡くなる人がいたり、コロナ禍等で有名人が亡くなったりすることがあり、終わりは必ず来るしそれが何の前触れもなく突然起こることも珍しくはないと感じたのがそもそものきっかけです。
身近なところで突然人が死んでしまう話としてスタートしたので、最初はアイドル以外の案もいくつかありました。
ただ「大切な人が死んでしまって悲しい」という話にはしたくなかったので、ある程度距離を持たせるためにアイドルとファンという形にしました。
――本作を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。
「客観的な視点で描く」という点が一番気を使いました。
死は物語を作る上でもっとも描きやすい題材のひとつだと思っていて、エモくしようと思えばいくらでもできてしまいます。
登場人物の心情にフォーカスしやすいのが漫画の強みでもありますが、今回はあえてカメラを意識して外側から描くことでエモーショナルになりすぎないように気をつけました。
――アイドルとファンの関係性が素敵な作品でしたが、ナカマチさんには推しがいますか。
人よりも作品を好きになるタイプなので、好きな人やグループがいても推し活をするほどになることはあまりないです。
推し作品でいえば「宇宙よりも遠い場所」というアニメが激推で、私が漫画を始めた直接のきっかけになりました。(BDやコミックはKADOKAWA様から出ていたかと思います)
――さっぱりした性格のエリカは、SNS分析力が凄まじいです。ナツミの特技はなんだったのでしょうか。
特技というか、キャラクター設定としてはこんな感じでした。
・ナツミ → 天然天才型。物事に怖気づいたりする一方で無自覚に大胆な行動に出るタイプ。ライブ本番前に緊張で震えるけど、いざステージに上がると圧巻のパフォーマンスを見せる。
・エリカ → 努力計算型。ナツミのような才能がないという自覚があり、努力とロジックでそれを補っている。ライブ本番前はどんなに緊張していても絶対に表に出さないし、ステージも完璧にこなす。
これらは直接的に漫画内で描かれることはなかったですが、2人の行動や言動を考える上での土台となりました。
――前に進んだ先で、リリサマはどう過ごしていくのでしょうか。
最初はこの先どうするのか/何をしたいか2人で話す場面を入れようかと思っていたのですが、なるべくシンプルにしたかったので入れませんでした。
2人はもう同じグループとして組むことはないかもしれませんが、どこかでまた2人の人生が交わる瞬間があるのではないかと思います。
――今後の展望や目標をお教えください。
基本的に北海道を舞台とした漫画を描いているので、読んでくださった方に「北海道いいな」と思っていただけるような作品を描いていければと思います。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
普段はそこまで多くの人に読んでいただいているわけではないので、反響が大きくてとても驚いています。遅筆なのでたくさん描けるわけではないですが、これからも読んでいただけると嬉しいです。