<スキップとローファー最終回>誰もが誰かを眩しく思っている…主題歌の歌詞とも重なる、リアルで繊細な感情描写に感動

2023/06/22 08:30 配信

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「スキップとローファー」第12話「キラキラ」が放送(C)高松美咲・講談社/「スキップとローファー」製作委員会

田舎から上京してきた天然な女子高生みつみの青春が描かれるTVアニメ「スキップとローファー」(毎週火曜夜11:00-11:30/TOKYO MXほか、DMM TVにて先行配信)が、6月20日(火)に放送の第12話「キラキラ」でついに最終回を迎えた。温かみのある映像とともに高校生たちのリアルで繊細な感情を映し出した本作に、改めて賞賛の声が集まっている。(以下、ネタバレを含みます)

志摩を救ったコアリクイの威嚇


TVアニメ「スキップとローファー」は、2018年から講談社の月刊漫画雑誌「月刊アフタヌーン」にて連載中の、高松美咲による同名コミックが原作。田舎から上京してきた、勉強はできるけど、距離感が独特でちょっとズレてる女子高生の“みつみ”こと岩倉美津未(CV:黒沢ともよ)が、個性豊かなクラスメイトたちに影響を与えていく様を映したスクールライフ・コメディだ。

東京の進学校・つばめ西高校に入学して初めての文化祭を迎え、約半年の間にかけがえのない友人ができたことを実感したみつみ。それはどんなことにも前向きに、一生懸命とり組んできた彼女自身の力によるものである。そんなみつみに最も影響されてきたのが、クラス一のイケメン・志摩(CV:江越彬紀)だ。いつも他人に合わせ、自分の気持ちを置き去りにしてきた志摩。それでいいと、どこかで諦めていた彼の心境の変化が、最終話となる第12話にて描かれた。

志摩の心境の変化が描かれる(C)高松美咲・講談社/「スキップとローファー」製作委員会


大きなトラブルもなく迎えた文化祭最終日。1年3組の出し物であるミュージカルを観に来た志摩の母は、ファッションモデルの梨々華(CV:寿美菜子)に遭遇する。梨々華はかつて志摩の子役仲間で、二人はとても仲が良かった。しかし、志摩が参加する大人の飲み会について行ったことで梨々華の未成年飲酒疑惑が浮上。この一件で炎上騒ぎとなり、梨々華が仕事を失ったことから二人の関係は歪んでしまった。

志摩の母も少なからず梨々華に後ろめたい気持ちを抱いているのだろう。まだ彼女が息子と連絡を取っているという事実に戸惑いを隠せない様子だ。そんな志摩の母に「おばさん、また(志摩)聡介を自分のために演じさせるの?」と凄む梨々華。志摩の母は子役時代の志摩に大きな期待をかけていた。志摩はそんな母の期待に応えるのに必死だったがゆえに、いつの間にか自分の意見を持てなくなったのである。自分の息子をプレッシャーで潰してしまったという志摩の母の罪悪感を、梨々華は見事についたのだ。

もしかしたら彼女は彼女なりに、志摩を思いやる気持ちがあるのかもしれない。だけど、志摩の優しさに付け込んでいるのは梨々華もまた同じだ。梨々華は志摩の母を追い返し、今度は志摩のクラスメイトに彼が元子役であるという事実がバレるように仕向ける。家庭も学校も、志摩の居場所をすべて荒らし、彼を孤立させて自分から離れないようにしているのだろう。だが、計画は失敗だった。みつみが一連の出来事を目撃し、志摩と梨々華の間に立ちはだかったのである。

コアリクイの威嚇みたいに、ちっとも迫力のないみつみの梨々華に対する牽制。だけど、志摩の心を精一杯守ろうとするその姿が場の空気を一掃させる。自分を大事にするのがちょっと苦手な志摩にとって、本気で心配してくれるみつみのような存在は必要不可欠だと思わされた瞬間である。

志摩の悶々とした気持ちの正体は……


そしてミュージカル本番。志摩は高校に入学してから自分の中で何かが変化していっていることに気づく。地元にいつか貢献するため、官僚になるべく今から努力するみつみや、劇作家を目指し、青春を学生演劇に捧げる兼近(CV:木村良平)に抱く悶々とした気持ちの正体。それは、嫉妬だった。

子供の頃から周りの顔色を伺って生きてきた志摩。なのに今更、好きに生きろと言われても自分の気持ちすら分からない。そんな自分に、いつの間にかもどかしさを感じるようになっていた。

一生懸命になれるみんなが羨ましい、自分もそこに行きたい。そうした気持ちをようやく認められた志摩は、梨々華と対峙。梨々華に申し訳なく思ってはいるが、一緒に堕ちていくことはできないと告げた上で、「俺、学校楽しいんだ」と正直な気持ちを打ち明ける。すんなり和解とはならず、梨々華は決して納得したわけじゃない。だけど、志摩はようやく長い長い呪縛から解き放たれた。

帰り道、強がっていた梨々華は同じく子役仲間の玖里寿(CV:永野由祐)の前で大号泣。彼女も本当は、志摩のせいで自分が仕事を失ったわけじゃないことは分かっていた。だけど、志摩がどんどん遠い存在になっていくのが怖くて、汚い手を使ってでも彼を引き止めていたかったのだ。梨々華がこれまでしてきたことは決して褒められたものではないが、その気持ちは理解できる。でも玖里寿が言うように、進む道が分かれたとしてもそれまでの関係性が終わるわけじゃない。いつかそのことに彼女も気づくときがくるだろう。

文化祭最終日に見学に来た志摩の幼なじみ・梨々華(C)高松美咲・講談社/「スキップとローファー」製作委員会