「全ての女性が共感できる劣等感や不安感のようなものを表現したい」
――軽度知的障害と自閉症を抱える役ということで、どのような役作りをされましたか?
具体的には、言葉がすぐに出てこないとか、自分の感情を言語化するのが非常に苦手だとか、手先が不器用なので細かな行動が苦手で、普通の人が当たり前にできていることがとても難しいとか、そういうような表現をしています。
ただ、精神性としては、軽度知的障害の有紗だからということではなく、全ての女性が共感できる劣等感や不安感のようなものを表現していけたらいいなと思いながら演じています。
――役作りにあたって、実際に障害のある方と接する機会はありましたか?
実際に接する機会はなかったのですが、監督やプロデューサーさんたちに当事者の方に取材をしていただいて、その映像をいただいたり、参考書類をいただいたり、本を読んだりして勉強しました。
テンポ感の違いなど、自分にはない要素に苦戦
――有紗を演じる上で難しいと感じている部分があれば教えてください。
「言葉がすぐに出ない」という表現方法を取っているのですが、小さい頃からこの仕事をさせていただいている私は、反射的に何かを言う癖がありまして…。何かを反射的に言いながらその間に頭の中でつじつまを合わせてゴールに向かわせるみたいな、そういう癖があることに気付いたんです。
それって対極の表現方法じゃないですか。なので、反射的に言葉が出ないそのテンポ感の違いというのに最初の数日間はすごく悩みましたし、自分にはない要素だと思って勉強にもなりました。
――そのような役作りも踏まえて、特に注目してほしいポイントはどこですか?
私が有紗に対してすごくすてきだなと思っているところは、自分がどうしたいかというよりも、相手のことを考えすぎて空回りしてしまう特性です。それで結果的に失敗しちゃうようなこともあるし、自滅しちゃうようなこともあって、結果的にいいようにならないことも多くあるのですが、でも、その相手を思う感情の根源がすごく魅力的だなと思っているので、そんなところを見て、有紗という役を愛していただけたらとてもうれしいです。
――有紗とご自身との共通点はありますか?
とってもあります。劣等感とか、慢性的に感じる不安感とかすごく分かりますね。それってきっと障害の有無は関係ないのではないかなと思います。恋愛において、根拠もなく不安になるとか、言いたいことも言えずに結果的に相手を傷付けてしまって、そんな自分にまた傷付くとか、そういうのってすごく分かるじゃないですか。
それがこの作品が多くの人に支持されている理由なのだろうなとも思いますし、私自身もとても共感できるポイントだと思っています。