自分たちで魅力的だと思えるものを作らないと視聴者は見向きもしてくれない
――これまでお仕事されてきた中で、ターニングポイントとなった出来事や人との出会いはありますか?
「入社間もないころは、いくら企画書を書いても全然通らなかったんですね。そんなとき、ある上司が飲みに連れて行ってくれたんです。すごく厳格なタイプの人だったので、こわごわついていったら、新橋のカウンター席しかないスナックで、リコさんっていうママがいて。で、なかなか企画が通らないっていう話を上司にしたら、いきなり怒鳴られたんですよ、『おまえは自分を天才だと思うか!? 思わないなら辞めちまえ!!』って。リコママと手をつなぎながら言うから、あんまり説得力なかったんだけど(笑)。でも、『テレビを作る人間は、視聴者から愛されるために普通の感性が一番大切。でも同時に、自分は天才だという自信も持っていないとダメだ』と言われて。その言葉はけっこう目からウロコでしたね。それ以来、企画書には自分が面白いと思ったことを自信を持って書けるようになった気がします」
――では、テレビの作り手としての、これからの展望は?
「これからもネットの動画配信なんかは、より広く普及していくでしょうし、ツールが変わっていくのは止められないと思うんです。ただ、それ以前の問題として、テレビ自体がもう何周もしちゃってる気がするんですよね。例えば、芸人を追い込むっていう企画をやるときに、『電波少年』('93~'03年日本テレビ系)を超えるような企画のルールはいまだに見つかってないと思うし。
だから僕たちとしては、まずは『思った通りやっていこうぜ』ということですね。やっぱり自分たちで魅力的だと思えるものを作らないと、視聴者は見向きもしてくれませんから。で、そのためには、僕は“素直”という言葉がキーワードだと思っていて。素直に面白い、素直にすごい、素直にありがとう、そういうストレートな感性で番組を作っていくことが大事だと思います。今のテレビ局って、勝手に先回りしていろんな心配をして、ヤスリで削っていっちゃうんですよ。万人に受けるように、どんどん大人しい番組になっていく。でも、そんな番組は絶対に当たらないですよ。やっぱりヤスリをかけちゃいけない。さわらぬ神に祟りなし、という考えからは何も生まれない。だから、そのための“勇気”も必要かもしれません。これからのテレビに必要なのは“素直”と“勇気”ですね」