アニメ「【推しの子】」(ABEMA・ディズニープラス・DMM TVほかで配信)が最終回を迎えた。今回は「【推しの子】は私にとって、有馬かなの成長と発展と覚醒の物語」と熱っぽく話す、音楽を始めとするエンタメ全般に精通したフリージャーナリスト・原田和典氏が、社会現象になった4月期アニメ「【推しの子】」をコテコテなレビューを交えて振り返る。(以下、ネタバレを含みます)
「最終回よ、来るな!」
6月に入ってからというもの、「最終回よ、来るな!」という気持ちが強まるばかりだった。終わってから壮大な“ロス”に襲われるであろうことは確定に等しく、今後有無を言わさずやってくる長く湿っぽいアジアの夏を乗り切るための特効薬の一つが消えていくようにも感じられたからだ。
が、ひとまず「これが終わりではない」と公式発表(第2期制作決定)されたことで、期待を高まらせ、第2期開始までの日々を乗り切っていけそうだ。物語のさらなる発展に接せられるのは間違いのないところだろう。何より有馬かなにまた逢えるのがとにかくうれしいのだ。
「【推しの子】」とは
同作は、「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で2020年から連載されている赤坂アカと横槍メンゴによる人気漫画が原作。非業の死を遂げた主人公の青年が前世の記憶を持ったまま、“推し”ていたアイドルの子どもに生まれ変わるも、数年後に熱狂的なファンに母親であるアイドルを殺されてしまい、犯人に情報提供したと思われる父親に復讐(ふくしゅう)するために奔走する姿を描く。
「単行本の累計発行部数が900万部を突破した」とちょっと前に報じられていたかと思えば、今しがたコミック版の公式Twitterを見たら「12巻累計1200万部突破!※更に重版予定※」と書いてあり、どこまで売れまくっているんだよと思う。その人気に押されるかのように、アニメも放送が始まるとほぼ毎週トレンド上位に位置していた。
物語の心臓部に位置するのは、伝説のアイドルグループ「B小町」でセンターを務めた星野アイ(CV:高橋李依)。カリスマ的なアイドル力の持ち主であったが、アイドルとして登り坂の勢いにあった16歳の頃に人知れず男女の双生児を出産。その父親の名を彼女が明かすことはなかった。そして、「B小町のドーム公演」直前、ストーカーらしき男に命を奪われる。
双生児はアイ自身によって愛久愛海(アクアマリン/男児)、瑠美衣(ルビー/女児)と命名された。男児の名前は長過ぎたのか誰もが「アクア」と呼ぶようになり、芸名としてもこちらを採用。アクアは医師・ゴロー(彼が勤める田舎町の病院に、アイは出産のためやってきた)、ルビーはアイに熱狂的に憧れる難病の少女・さりなの転生だ。2人は高校に進学し、それぞれの目的に向かって動く。
“ママ”を慕うルビー(CV:伊駒ゆりえ)はアイドル界に入って「B小町」を再興、アクア(CV:大塚剛央)は自分たちの父親を突き止めたいとの思いで(再び)役者として活動を開始する。なぜ再びか、というと、子役として活動していた時期があったからで、そのとき子役界のトップに位置して、天才と呼ばれていたのが有馬かな(CV:潘めぐみ)。
元・天才子役と現・天才役者
彼女は成長するに伴って当然ながら路線転換せざるを得なくなったが、子どもではなくなった元・天才子役が、かつてのような注目を集めることは難しくなった。レッスンを欠かさず、歌をはじめいろんなスキルが上昇したというのに。いつ明けるか分からないスランプのとき、かなはアクアとルビーに出会い、物語は急展開。かなは新生「B小町」のセンターとしてアイドルフェスのステージに立つことになった。
かなと同様、私が強く関心を高めている登場人物の一人が黒川あかね(CV:石見舞菜香)だ。アクアも登場したテレビの恋愛リアリティーショーでは損な役回りをすることになり、ネット上に匿名で書き込まれた悪口(=誹謗中傷)を受けて、自ら命を放棄する寸前までいき、私もひどく心が落ち込んでしまったが、それだけに、ここ数回に登場する生き生きした表情にはホッとさせられた。
世の中、こういう真面目で堅実な人が割を食うのはおかしい。彼女は、実は第一級の役者がそろう「劇団ララライ」(アイも、この劇団と交流があった)のエース。役柄を自身に憑依させるかのような演技には鬼気迫るものがあり、その実力はかなもライバル視するほどだ。アニメの第1期は、アクア、あかね、かながそろって2.5次元舞台に出演することが決定した話で締めくくられた。
▼Disney+で「【推しの子】」を見る
https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/oshi-no-ko
▼DMM TVで「【推しの子】」を見る
https://tv.dmm.com/vod/detail/?season=exeegpzuvbsr474crvddwhfvt
KADOKAWA アニメーション
発売日: 2023/06/28