名匠・岩井俊二監督作品で歌手デビューも
2020年はさらなる飛躍の年となった。1月に公開された松たか子主演の映画「ラストレター」に出演したが、主題歌も担当することとなり、小林武史作曲、「ラストレター」の監督を務めた岩井俊二が作詞を手掛けた「カエルノウタ」で歌手デビューを果たした。カップリング曲が小泉今日子の「あなたに会えてよかった」と荒井由美の「返事はいらない」のカバーというのも話題となった。
歌手活動に関しては7月にホフディランのプロデュースでホフディランの「スマイル」をカバーしてリリースもしている。MVはタイトル通り、森のスマイルが溢れる内容になっていて、森が出演した大塚製薬「オロナミンC」のCMソングにも起用された。
活動のフィールドを広げつつ、3月から放送された連続テレビ小説「エール」(NHK総合ほか)にヒロインの妹役で出演、19歳の誕生日である8月31日には1st写真集「Peace」を発売するなど勢いも加速。10月から放送された「この恋あたためますか」(TBS系)で連続ドラマ初主演。演じた井上樹木は元アイドルで、グループをクビになってからはコンビニでアルバイトをしながら、コンビニスイーツの批評をSNSで行うのが唯一の楽しみという女の子。
その的確な批評に目をつけたコンビニの社長・浅羽拓実(中村倫也)がスイーツ開発スタッフに引き入れた。最初は浅羽を“おっさん”呼ばわりしていたが、スイーツ開発でフォローしてくれたりして、浅羽のことを好きになっていく樹木。浅羽の元カノの存在や、樹木のことを好きだという男性が現れ、揺れ動く恋心が描かれ、共感度の高い作品となった。このドラマで森は「第106回ザテレビジョンドラマアカデミー賞」主演女優賞を受賞している。
受賞後のインタビューで、森は「撮影初日は樹木という人物の“無限さ”におじけついてしまい、演技が思うようにできず、落胆してすごく泣いたんです。でも、監督が『樹木はあなたのものなんだから堂々としていなさい』と言ってくださって、気持ちを取り直しました」と“連ドラ主演デビュー作”の撮影を振り返っていた。
“森七菜役”や“まかないさん”を好演…そして月9主演へ
「この恋あたためますか」がスタートする直前の10月16日、ドラマ「あのコの夢を見たんです。」(テレビ東京系/ディズニープラスほかで配信中)の第3話に出演。このドラマは南海キャンディーズ・山里亮太の小説を映像化したもので、実名の女優やアイドルたちを山里が妄想して創作した内容となっている。
森のエピソードは原作にはなく、ドラマ用に新たに書き下ろされたもの。ここに登場する“森七菜”は元気いっぱいな高校生。告白するたびに“友達としか見られない”とフラれ続ける森は、幼なじみの山里を巻き込んで“悲劇のヒロインプロジェクト”を始動する、というストーリー。山里を演じた仲野太賀は、「この恋あたためますか」にも出演しており、そちらでも森演じる樹木を好きになる役というのも興味深い。
いろんな作品を経て、表現力の幅もどんどん広げていった森。ここ最近の成長・進化の度合いも大きく感じる。2023年1月に配信された「舞妓さんちのまかないさん」(Netflix)で出口夏希とW主演を務め、野月キヨを演じた。舞妓さんになるために同級生のすみれ(出口)と一緒に青森から京都にやってきたキヨだったが、舞や所作などを早く覚えるすみれとは対照的に、キヨは不器用でうまくできず、早々に「青森に帰りなさい」と言われてしまう。
しかし、料理がうまいキヨはまかないさんがお休みの時に代わりに料理をしたことがきっかけで、まかないさんとして残ることを許された。不器用だけど、途中で投げ出さず最後までやり切る。そんな一生懸命さ、けなげさを感じさせるキヨをうまく表現し、高い評価を得た。5月に公開された映画「銀河鉄道の父」、6月公開の「君は放課後インソムニア」でも印象的な演技を見せ、現在は7月10日から始まった「真夏のシンデレラ」に出演中。
キャリアを重ねても、素朴さ、初々しさ、そして親近感のある雰囲気は変わらない森。演技=表現において“自然体”で見せることが難しいと言われるが、それをまさしく自然にできるのが彼女だ。「真夏のシンデレラ」を含め、今後の作品でもどんな演技を見せてくれるのか楽しみだ。
◆文=田中隆信
https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/my-wildest-fantasies/
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