視聴者を“沼落ち”させる感情表現
役へのアプローチで「感情」を大切にしているということは、2022年7月期の永野芽郁主演ドラマ「ユニコーンに乗って」(TBS系)でのインタビューでも語っていた。同作では、永野演じるスタートアップ企業の若きCEOのビジネスパートナーでありつつ、恋しているという役どころ。切なさや、思い人へ向けた笑顔など、繊細な感情を表した演技で、役柄に“沼る”視聴者が続出した。
振り返れば、視聴者を“沼落ち”させたのは、この役ばかりではない。「妻、小学生になる。」(2022年、TBS系/ディズニープラスで配信中)では、主人公の娘と親しくなっていく相手。第5話でのカフェで順番待ちをしていたときに、高齢の女性が果物を落としたのを見てすぐに助けに行くという優しい人物がぴったり過ぎて、ラストに向けて主人公の娘と一緒に恋していく気持ちを味わえた。
その前年のドラマ「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」(日本テレビ系)がもっと決定的で、杉野の知名度を一気に押し上げたともいえる。杉咲花演じる弱視の主人公に恋する不良少年・森生。顔に傷があり、喧嘩っ早いが、実はピュアな心を持っている。そのピュアで優しいところが出ているともいえる口癖の「さーせん(すみません)」にもキュンキュンさせられた。
視聴者をキュンとさせるのは、ハグやキスといった行動や、せりふの中身があるが、いずれも感情が行き渡っていないと伝わらないものである。杉野が“感情”を大切にしてきたからこそ、演じる役に魅了され、沼落ちする人が相次いでいるのだ。
俳優として「成長し続けたい」という思い
大人の俳優が小学三年生を大真面目に演じる「直ちゃんは小学三年生」(2021年、テレビ東京)では、純粋で真っすぐな性格の主人公を好演していたが、真っすぐさは杉野からにじみ出てくるものでもあるかもしれない。
それはインタビューで垣間見られる。こんな弟が欲しいという切実な思いを視聴者に植え付けた「僕の姉ちゃん」(2022年、テレビ東京系)のインタビューでは、そのときにできる100%は出しつつも「ゴールがないものなので、追求できることがどんどん出てくるし、自分の演技のやり方も変わります。成長し続けたいので、自分の演技を省みることは大切かなと思っています」と打ち明けた。「罠の戦争」のときにも、もっとできたはずと反省を口にしていた。
学校一のイケメン役を違和感なく演じた映画「L・DK ひとつ屋根の下、『スキ』がふたつ。」(2019年※「・」は正しくはハートマーク)も胸キュン作品だったが、近年のドラマ作品で沼落ちが相次いでいるのは、成長し続ける演技が実を結んできたのだろう。
真っすぐ真摯(しんし)に役に取り組む。そんな彼だからこそ、次の作品、役柄が楽しみになる。さらなる高みを目指して、よりいいものをきっと見せてくれるに違いないと。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
※「草なぎ剛」のなぎは、弓へんに前の旧字体その下に刀が正式表記
https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/if-my-wife-becomes-an-elementary-school-student/
▼ディズニープラス特集ページはこちら