――先日行われたイベントで、山田監督が現在91歳で90本の映画を撮影、それでもまだ迷うことがあるとおっしゃっていたことが印象的でした。大泉さんは数々の賞を受賞されたり、大役を任されたりと着実にキャリアを重ねてきているわけですが、山田監督のように迷うこと、不安に感じることはありますか?
それはもちろんありますよ。特にこの仕事をしていると、みんな不安になるんじゃないかと思っています。もちろん良い評価ばかりじゃないし、良い結果ばかりじゃないこともありますからね。だからこそ、自分の気持ちを常に健全でいられるようにすることの大変さを感じています。ある種、それって幸せなことでもあるんですけどね。
世界に目を向ければ、本当に生きていくだけで大変な人たちもたくさんいる中で、自分の生きてくこと以外での評価みたいなことに一喜一憂するなんてどうでも良いことと思うこともできるし、これだけ不自由なく生きてるだけで幸せなのに、仕事に対する評価を気にする必要があるのかと。
ただ、それでもやっぱり不安になることもあるので、本当にいま自分にできることを一生懸命やるだけだと思うようにはしています。
――なるほど。ぜひ不安になる中でも、心を健全に保つ秘訣があれば教えてください。
このSNSの時代になって、ある種、自分の心にとって良いこともあれば、非常に不健全なことも多いじゃないですか。一昔前であれば、今ほどダイレクトに自分の仕事に対して人々が思ってるものが伝わるってことがなかった。それが簡単に受け取れる時代になっちゃったんだよね。
だけど、そこで気にするべきは良いことと腑に落ちることだけで良くて、よくわからないことを言われても、全く気にする必要はないんです。自分にとって嫌な意見があると、すごく盛り上がっているように見えちゃうけど、ほとんどの人が言っていないし、自分が言われてることもほとんどの人は知らないんです。そう思うことで、わりと健全でいられるのかなと思います。
――自分から見に行くから「みんな言ってる」って思っちゃう、と。
そうそう。もちろんね、それに限らず、自分の判断とか自分の評価、自分の仕事に対して満足がいくものだったのかと考えてしまうことはあると思う。でも、その場合は、また頑張るしかないわけだから、自分がどう思うかを大切にすることが大事かなと。褒められたらそれで気分良くすればいいし、人から何か言われても自分が腑に落ちるならそれでいいと思います。
◆取材・文=於ありさ
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