コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は山地ひでのりさんの『ソアラと魔物の家』をピックアップ。
サンデーうぇぶり(小学館)で連載中の本作は、何をしても満足できなかった魔王様がボロ小屋作りを通じて初めて知った「創る喜び」を描き話題を集めている。漫画家であり作者の山地ひでのりさんが7月1日に自身のX(旧Twitter)に投稿したところ、6.5万を超える「いいね」が寄せられ反響を呼んだ。この記事では、山地ひでのりさんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについて語ってもらった。
「創る喜び」を知った魔王様がとるまさかの行動に反響
魔王様が巨大な城塞を持つ豪華で荘厳な理想の魔王城の設計を依頼したのはまさかの人間の女建築士だった。理想どおりの設計図を見て満足した魔王だったが、女は「これを完成させたところでお前の欲しい物はきっと手に入らんぞ」と忠告した。
その後設計図通りの魔王城が完成したものの、魔王様は女の読み通りどこか不満げな様子。苛立ちを抑えきれない魔王様に女は、納得いく家が欲しければ「私に全て従ってもらう」と条件を突きつけたのだった。
そして女はボロい茅葺き小屋を作るための草刈りや建材調達などをやるよう魔王様に指示する。はじめはその意味が理解できなかった魔王様だったが、徐々に楽しそうな顔を見せるようになっていく。
そんな時、特大の竜巻(ドラゴンストーム)が茅葺き小屋に向かっていることが知らされた。魔王城への避難を呼びかける魔物たちを背に魔王様がとった行動とは…。
何を奪っても心が満たされなかった魔王様がはじめて「創る喜び」を知った姿が多くの読者の心を打った本作。X(旧Twitter)上では「あまりにも良すぎて鳥肌が…」「控えめに言って最高」「めちゃくちゃ良い話で目頭が熱くなった」など声とともに「DIY好きにはたまらない作品だ…!」「1人の建築に携る者として凄く感動した」「職業柄追ってみたけど惹き込まれる。」など同業者からのコメントも多く寄せられ反響を呼んでいる。
「どういう家であれば住み心地がよいか、悩みを解決できるかという点をよりリアルに追及」作者・山地ひでのりさんが語る創作の背景とこだわり
――『ソアラと魔物の家』はどのような発想から生まれた作品なのでしょうか。
ファンタジーという自分がこれまでに培ってきた分野を活かしつつ、読者が身近に感じられる題材を取り入れようと考えていました。衣食住は人が生活いく上で必要な要素であり、読者にもなじみのあるテーマですが、「住」にフォーカスしたファンタジー漫画が、これまでにあまりないと思い、建築にファンタジー要素を取り入れた漫画、『ソアラと魔物の家』が生まれました。
――本作を描くうえで特にこだわった点や「ここを見てほしい」というポイントがあればお聞かせください。
本作はさまざまなモンスターが登場し、ファンタジー要素あふれる家を建築していく漫画なのですが、ファンタジーのわくわく感や見ていて楽しい家であることはもちろん、そのモンスターが本当に実在した場合に、どういう悩みを抱えていて、どういう家であれば住み心地がよいか、悩みを解決できるかという点をよりリアルに追及しています。その答えを詰め込んだ、見開きの家の完成図は、読者の方がより家のイメージを膨らませられるよう、細部まで拘って書き込んでいますので、是非注目して、見ていただきたいです。
――本作の中で山地ひでのりさんにとって特に思い入れのあるシーンやセリフがあれば理由とともにお聞かせください。
第2話の最後にキリクがソアラを建築の旅に誘うシーンがあるのですが、そこでキリクがソアラにかけた言葉「手ェ見りゃわかる。お前はなかなか、役にたつ。」というセリフ。
ずっと、過酷な修行に耐えながらも、評価されることも、感謝されることもなく孤独に過ごしてきたソアラが、初めて誰かに認められた瞬間を描いています。この物語のもう一つの軸とも言える、ソアラの成長はこの言葉から始まっていると思いますので、思い入れのあるシーンとなりました。
――本作は現在サンデーうぇぶり・サンデーS(小学館)で連載中ですが、今後の作品の見どころについてお聞かせください。
最新話では、敵キャラも登場し、ソアラとの激しいバトルが繰り広げられていますが、今後もよりストーリー性の強いお話が続きます。キリク達ドワーフ族の過去にせまり、彼らがなぜ魔物の家をつくる旅に出ることになったのかについても明らかになっていきます。 もちろん、ファンタジー×建築の要素もこれまでと違ったテイストで登場しますので、その辺りも楽しみしていただきたいです。
――山地ひでのりさんは本作以外にも『マリーグレイブ』(小学館)などファンタジーを舞台にした作品を多く手掛けていますが、ファンタジー作品を描くようになったきっかけや理由があればお聞かせください。
幼いころから、ゲームや映画等、ファンタジーを舞台にしたものに多く触れていたことが大きく影響しています。現実には存在しない世界観やキャラクターを想像力を膨らませて描くのが好きで、それが活かせるジャンルということで、ファンタジー作品を描いています。
――最後に読者やファンの方をはじめ、これから本作を読むという方へメッセージをお願いします。
いつも応援をいただきありがとうございます。今後もたくさんの方に楽しんでいただけるように精一杯頑張りますので、どうかソアラ達の冒険に、今後ともお付き合いいただけると嬉しいです!