アニメソングの女王・堀江美都子「感心ではなく、感動を歌うこと」、水木一郎ら歴代レジェンドと共に歌い継ぐアニソンへの想い

「アニソンを選んでよかった」堀江美都子が時代を超えて輝く理由とは

撮影=宮川朋久


――堀江さんがアニメソングを歌い続けてきた、想いの源泉はどういうものでしょうか?

今思うと、なぜ歌謡曲にいかずアニメソングでつき進んだのかと言われれば、「歌詞の普遍性」と「メロディの美しさ」と「キャッチーなアレンジ」だと思います。

例えば恋愛の歌は50年後に新鮮にそのままのロマンや自分の気持ちで歌えるのかと言われると、私は自信がないです。ただアニソンは時代を超えて、いつでも新鮮に歌えるんですよ。私はこっちを選んでよかったと思います。今や世界的に「アニメ」や「アニメソング」はサブカルとして日本の代表としてしっかり形ができていて、J-POPとの境目もなくなってきている感じですよね。

「感心ではなく感動を」…アニメソングに懸ける想い

「タツノコプロ創立60周年記念特別公演~Tatsunoko 60th Legends~」より※提供写真


――現在では、声優歌手の方は、イベントやライブ、時には舞台など、やらないといけないことが多岐にわたり、まさにボーダーレスになっていて大変だと思います。堀江さんから今の声優さんたちへメッセージはありますか?

今の声優さんたちって、実に器用ですごいなと思います。オールマイティーだしルックスも良いし、フリートークもできるし、歌も歌えば踊りも踊れるし。できないことないんじゃないかと思います。昔は「声優さん」と言えば“影で声を出す人”みたいな形でしたし、主題歌の歌手も“裏で歌っている人”という形だったので、随分と違ってきています。

あとは、価値観が時代によって変わってきている気もします。私の場合、アニソンは「感心よりも感動を歌え」と言われ育てられました。日本語の美しさ、メロディーの美しさをどうやって伝えるかという部分を追求しました。だけど今は2オクターブくらいある音域を、デジタルや楽器のように歌えるというところに価値観が移っているのかもしれないですね。もちろん中にはシンガーソングライターが書くような良い歌詞やメロディーもありますが、“形として関心する”という方に作り上げられているかなと感じます。

――「感動を歌う」って素敵な言葉ですね。どなたの教えなのでしょうか?

作曲家さん、作詞家さん、ディレクターさんです。「あなたは一生アニメの歌を歌う歌手になる」「日本語を美しく、感心されるではなく感動させられる歌手になるように」と言われてきました。

――今は楽器ではなくパソコンで作られていたりもしますしね。

生まれたときから聴いている音がデジタルで、「ボカロ」だったりとか…歌じゃなくて楽器が演奏するようなメロディーを歌ったりするわけじゃないですか。でも昔のアニソンって、“たかだか1オクターブくらい”の中に秀逸なメロディーが作られているんですよ。転調しなくても1オクターブあれば名曲が生まれます。だから、もう全く別物として捉えても良いかもしれないですね。でも、そのアニソンの進化がすごいとも思っています。

――来年歌手活動55周年を迎えられるということで、今も変わらず歌い続けるために大事にしていることは何かありますか?

“歌う前に自分を真っ白なキャンバスにすること”ですね。あと、当時の歌った時の状況…例えばお天気や先生に言われたことを思い出して、できるだけ崩さないこと。アニソンは崩して歌うと、聴いている人の思い出を崩しちゃうから。崩されて歌われたら嫌ですよね。なので、そこは気を付けています。

ただ、崩さないで歌うと「テクニックがないんじゃないか」とかいろいろ言う人がいるんですよ。でも、その何倍も先を行って、“変わるものを変わらないように修正しながらキープする”っていう作業が、いわゆる職人なんですよね。「カンナ0.2ミリで削る」「天気によって変わる」とか、そんな感じかも(笑)。

でも、私よりも年上で現役バリバリで活躍する方が多いので、私もまだまだだなって思います。

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