コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、DLsite comipoをはじめとした電子コミックサービスで好評配信中の、西のえこさん著「いっぱいおかえり」。
この作品の1話が「引越当日に彼氏にドタキャンされて初めての一人飲み」として、2023年12月29日にX(旧Twitter)に投稿されると、瞬く間に4.7万以上のいいねを集めて話題になった。このポストには「こんな居酒屋が近所にあればいいのに」「常連さんの温かさでうるっときた」「やばい、泣きそうになった」といったコメントが殺到。この記事では作者の西のえこさんに、作品のこだわりなどについてインタビューを行った。
同棲当日にフラれた三十路が見つけた居場所とは…
駒子には大学時代から7年間付き合っている彼氏がいた。内向的な駒子にとって、彼の存在は輝いて見え、とても大切な存在だった。
しかしお互い社会人になり、忙しさから2人は徐々にすれ違っていく。三十目前の駒子。このままではいけないと、ある日駒子の方から同棲を提案する。するとOKの返事が。楽しみに同棲の準備をする駒子だったが、待ちに待った引っ越し当日、彼からまさかのメッセージが…
「ごめん。やっぱり一緒に暮らせない」
電話にも出なければ、メッセージも既読にすらならない。途方に暮れる駒子であったが、たまたま入った居酒屋で温かい常連さんたちと出会い、一緒にお酒を飲むなかで駒子の心は温められていき…
今日も小さな居酒屋が、人生に行き詰まった人々の心に小さな明かりを灯している。
作者:西のえこさん「誰かの”止まり木”になれるような作品に」
ーー『いっぱいおかえり』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
私自身よく飲みに行きます。美味しいお酒やごはんが好きなのもありますが、「飲み屋」という場が好きです。飲み屋に行くと色んな人たちに出会います。年齢、出身、仕事とみんなバラバラにも関わらず互いの話を聞いたり、聞いてもらったりを繰り返しているうちにやがて友達とはちょっと違う「飲み友達」と言う関係に。夜も深くなると酔っ払いの感情はジェットコースターのように目まぐるしく、一緒に笑って怒って泣いて、熱く語らい愚痴も喧嘩も恋の駆け引きも目の前で行われ様々なドラマが生まれるのを見てきました。自身を含め酔っ払いへの呆れた気持ち、憎みきれない思いや愛おしさ。飲み屋で経験した様々な感情や思いをいつか漫画で描けたらと思ったのがきっかけです。
ーー今作で「こだわった点」や、「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
お店のほっとするような暖かさや、こんなお店ありそうだしあったら行きたいなと言う雰囲気を目指しています。
ーー今回の作品のなかで、特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
「一緒に住もう」からの繋がらない電話の後、窓の外から帰宅を促す親子の会話が微かに聞こえてくるシーンです。夕方の郷愁感がありながらも家に居るはずの駒子は帰る場所を見失っています。そういう寂しさを描くのが好きです。
ーー本作は4.7万件以上のいいねを獲得しています。多くの反響を呼んだことについて率直な感想をお聞かせください。
読んで下さっている方がいてホッとしてます。
ーー西のえこさんご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。
自分の感じた言葉にできないものを漫画という手段で表せるのは私の中で幸いな事ですが、それでもまだまだ形にしきれない悔しさやもどかしさを感じているので、もっと純度高く表現できるよう精進したいです。それと大事なことですが、お酒に飲み込まれないよう心身共に健康に気を遣いたいです。
ーー最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
この度は「いっぱいおかえり」を読んで頂きありがとうございます!飲兵衛はしばしば行きつけの店を拠点地、ホーム等と呼んだりします。私の飲み友達はそれを「止まり木」と呼んでいました。ちょっとだけ飲みたい夜や、ハチャメチャに酔いたい夜、そんな中に顔を出すと当たり前のように迎え入れてくれる「止まり木」がある安心感。お酒を飲む人も飲まない人も常連気分を味わってもらえるような、誰かの「止まり木」になれるような作品にしていきいたいです。