日常ではできない表現ができた役との出合い
――俳優としての仕事は、どういうところにやりがいや魅力を感じていますか?
素の状態だとできないことを、役を通して振り切って表現できることが、この仕事の魅力だと思っています。
2023年10月公演の「青山オペレッタ THE STAGE 〜ストーリア・パラッレーラ・ウノ〜」では、僕の演じる櫻井ノエが劇中劇の主演だったんです。ギリシャ神話を題材にしたストーリーで、ノエ演じるオルペウスは最愛の人と出会って喜んだり、その人を亡くして泣き叫んだりと感情の幅が大きい役でした。その役を演じているとき、すごく気持ちよかったんです。
――具体的にはどういったことでしょうか。
日常生活で涙が出るぐらい悲しいことってなかなか経験したことがないんですけど、でも、本当は泣き叫んでみることも経験してみたかったというか。僕がやりたくてもできなかったことを、役を通してできたんですよね。
もちろん、役の心情を無視して勝手に表現する訳ではなく、役に合わせて考えています。なので、“青オペ”では櫻井ノエが劇中劇でオルペウスという役柄を演じるという複雑な状況だったからこそ、さまざまな表現にチャレンジすることができたんだと思います。
生活リズムを整えるために始めた料理が趣味に
――最新作としては、新ミュージカル「スタミュ」が1月19日(金)からスタートしますが、稽古場の雰囲気はいかがですか?
“スタミュミュ”では、初めてキャストの中で最年長という立場を経験しています。 今回の“スタミュミュ”は舞台経験があまりない子たちもいて、だからこそ積極的に話しかけたり、コミュニケーションをとるようにしています。
芝居の経験は浅くても、踊ったらキラキラ輝く、歌ったらすごく表情がよくなる子がたくさんいて刺激を受けますし、後輩たちに舞台を好きになってもらえるように、この作品を通して舞台の魅力や楽しさを伝えることができたらいいなと思いますね。
――では、プライベートの時間の過ごし方についても教えてください。
基本的には休みの日でも稽古動画や台本を見たりと、仕事のことを考えています。ただ、趣味を増やそうと努力をしていて、フットサルに行ってみたり、料理にチャレンジしたりと、人らしい生活、ていねいな暮らしみたいなものを心がけています。
――意識をしてやらないと生活リズムが狂ってしまう、ということでしょうか?
そうなんですよ。もともと料理をはじめたのも、変な時間に寝るのを防ぐためなんです。疲れて帰ってうっかりそのまま寝ると、夜中に目が覚めて生活リズムがぐちゃぐちゃになってしまうので。帰宅したらすぐ料理を作る、そうするとお風呂もスムーズに入れて、ちゃんとした時間に眠ることができる。そういう生活を始めてみたら意外と楽しくて、今では料理をすることがリフレッシュになっています。
◆撮影=八木英里奈/取材・文=榎本麻紀恵/ヘア&メーク=田中宏昌/スタイリスト=齋藤良介
東宝