――日本のスタッフ、ハリウッドのスタッフの双方がちゃんと意見交換ができて、納得した上で進めていったと。
マークス氏:はい。その作業はとてもクリエイティブなものだったと思っています。
コンドウ氏:私は日本の血が入っているので、自分としては日本のことを結構知ってるつもりだったんですけど、知らないことや新しい発見がたくさんありました。私は日系アメリカ人でハワイで生まれているので、日本で生まれ育った人とはやっぱり感覚的に違う部分も多いんだなという気付きもあって、すごく貴重な経験になりました。
マークス氏:レイチェルさんが言ったように、日系アメリカ人、日系カナダ人のスタッフもたくさんいたんですが、日本からのスタッフとのやりとりの中でいろんなことを知れたのは大きかったなと思います。
――制作に関しても、日本のやり方と、ハリウッドのやり方で違うところがあると思いますが、そのあたりはどういうふうに進めていったんですか?
マークス氏:これも真田さんと話し合って決めたんですが、日本のスタイルで撮るのかハリウッドのスタイルで撮るのか、どちらかにではなくて、両方のいいところを採用していくやり方で進めていきました。
コンドウ氏:制作する現場のことだけじゃなく、見る人に対しても、一つのスタイルで進めてしまうと「アメリカの視聴者には合うかも知れないけど、日本の視聴者には合わないかも知れない」とか、その逆とか、そういうことがないように両方のやり方を融合していった感じですね。
――日本人キャストが多く、名もなき侍の役も日本人が起用されていますが、キャスティングの重要性はどのように考えていましたか?
マークス氏:キャスティングに関しても、日本人の役は日本のキャストがいいというのは私たちと真田さんの意見が一致していました。日本人キャストの方は時代劇を経験されている方も多くて、すでに所作や殺陣などを習得されていたりします。そういう細かな部分が結構時間がかかったりするので、日本人キャストを起用することは私たちにもメリットが多いんです。
コンドウ氏:お辞儀の仕方とか、そういう所作はやっぱり日本人の方のほうが慣れていますし、美しかったりするんです。
マークス氏:これはキャストの話ではないんですが、撮影の時に日本のスタッフの方の意見ですごく良くなったことがありました。家の中を撮影する時に、縁側にカメラを設置して中を撮ろうとしたんですけど、壁がすごく殺風景だったんです。「もう少し面白い画が撮りたいんだけど」と言ったら、日本のスタッフの方が「それはカメラのアングルが間違ってるんですよ。逆に向けないと。日本の家屋は室内から庭を望むように作られているから縁側があるんです」と教えてくれました。
コンドウ氏:外から中を撮るんじゃなくて、中から外の庭の方を撮る。カメラを置く場所を変えて逆方向にしただけで、全然違う風景が広がっていました。
――ちなみに、日本人監督の作品で好きな作品、影響を受けた作品はありますか?
マークス氏:時代劇は黒澤明監督の作品で知りました。黒澤さんの作品が好きで、時代劇も好きですけど、「天国と地獄」「悪い奴ほどよく眠る」「醉いどれ天使」といった現代を舞台にした作品の方がもっと好きですね。大学生の頃に日本に来たことがあるんですが、それも黒澤監督の影響でした。最近は、是枝(裕和)監督の作品が好きです。なので、今回、日本を舞台にした作品に関われたことが本当にうれしいです。
コンドウ:私は子どもの頃あまり日本の映画を見てこなかったんですけど、大人になってから日本の文学にハマりました。特に好きなのが遠藤周作さんの「沈黙」と安部公房さんの「砂の女」です。
――日本の映画や文学に興味を持ってらして、今回、日本を舞台とした作品を作られたということですが、また次に日本人キャスト、スタッフと組んで何かを作るとしたらどういう作品がいいですか?
マークス氏:「SHOGUN 将軍」は西洋人が日本に漂着して、全く新しい文化や国を知るという物語だったので、次に何か作るとしたら、その逆も面白いんじゃないかなって思います。日本人がアメリカに来て、初めて世界の文化を知る、みたいな感じで。ぜひまた何かできたらいいなと思います。
◆取材・文=田中隆信
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