中国のベストセラー作家・紫金陳の小説「坏小孩(悪童たち)』は、殺人犯と少年たちの頭脳戦を描いたクライムエンターテインメント。アジアでドラマ化され、大ヒットを記録した今作が物語の舞台を沖縄に移し、映画「ゴールド・ボーイ」として日本で生まれ変わり、3月8日(金)から全国公開する。富と地位を手にするために義理の両親を殺害した冷酷な殺人犯の東昇を演じるのは、岡田将生。完全犯罪のはずだった主人公の前に目撃者の少年たちが現れ、スリリングな駆け引きを繰り広げる男を恐ろしくも美しく演じた岡田にインタビューを行った。
――今作は、中国で大ヒットしたドラマの原作小説を日本で映画化した作品ですね。
中国の原作ものをやるというのは、面白い企画だなと思いました。物語から漂う匂いは、とても強烈で不気味で不穏な空気が流れていて、挑戦的なお話で。原作を読むと、日本人とはアイデンティティが全然違う部分もあります。
その違いを上手く埋めてくれたのが、ロケ地の沖縄。島ゆえにどこか隔離されていて、独特な空気が流れている土地なので、それがすごくプラスに働きました。東京で撮影していたら、きっと全く違う映画になっていたはずです。殺人を犯す舞台に、美しい沖縄の街並みが鮮烈に色付くことで、よりこの物語の説得力が生まれたと思います。
――岡田さんが演じた東昇は、義理の両親を殺害して完全犯罪をやってのけたつもりが、偶然3人の子どもたちにその瞬間を録画されたことから、脅迫されます。予期せぬ障害に対して、嫌悪感を募らせる役ですが、どのように演じましたか。
殺人犯の役なので、共感は基本的にできないですけど、東昇の中に渦巻く負の感情を軸に演じました。自分自身もいろんな怒りを抱えている時期があったので、自分の中にあるものを、この役を通して昇華させる気持ちで挑みました。東昇がなぜこういう殺人を犯してしまったのかということを考える時間は、意外にも楽しい作業でしたね。
――冷酷非道な役になりきるにあたって、撮影中は目つきが鋭くなるなど、役が自分に影響を及ぼすことはありましたか。
俳優さんたちと「役に影響を受けるかどうか」という話をすることもよくあるんですけど、僕は普段あまり役に引っ張られないほう。役は役なので…。それでも、今回は友人など身近な人たちに対して、普段より言葉がキツくなるとか、多少なりとも影響は受けていたのかもしれないです。
僕の場合、基本的には現場が終わったら、役の感覚は何にもないんです。そのほうが楽ですし。でも、撮影中、役のことを考えている時間は、やっぱり少しずつ、自分が寄っていっているのか、役がこちらに来てくれるのか分からないですけど、役に寄り添うことになります。
――殺人鬼の東昇の心情に浸かると辛かったですか?
完全犯罪で上手く行ったと思っていた所で子どもたちと出会うので、自分の思い通りにいかないフラストレーションみたいなものは、多少なりとも感じました。でも、台本読んでいてもずっと思っていたのは、邪魔をしてくる子どもたちに対して、手を下せる瞬間はあったのに、なぜ手を下さないのかということ。
そういう余白がある役だったので、辛いというより、それを考える時間が、本当に楽しくて。東という人物の背景は、最初から何も説明がないので、観る方にも考えるスペースがあると思います。
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