コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、“太陽が嫌いな怪物”を描いた漫画『太陽を食べてしまった怪物』をピックアップ。作者である漫画家のしたら領さんが、2024月2月11日に本作をX(旧Twitter)に投稿したところ、5.9万件を超える「いいね」や反響が多数寄せられた。本記事ではしたら領さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
「友達を殺したんだ!!」怪物が太陽を嫌う理由とは…
海の真ん中に、太陽を嫌う怪物がいた。ある日、横暴な日差しに我慢の限界を迎えた怪物は、太陽を食べてしまう。しかし、太陽はなぜ自分が嫌われているのか見当がつかない。
「私が何かしたのなら申し訳ない…しかしこのままでは君が干からびてしまうぞ」と、太陽は怪物のお腹の中から声をかける。そして太陽の熱が怪物の水分を奪っていくが、意地でも太陽を出そうとしない怪物。
その結果、どんどん水分を奪われていく怪物は「…許さない絶対にお前は……たんだ……友達を殺したんだ!!」という言葉を最後に気絶してしまうのだった。
怪物の言葉が妙に心に引っかかりながらも、なんとか怪物のお腹から脱出することに成功した太陽。このまま日を照らし続けるか、雨で冷やして怪物を助けるべきか悩んでいた。すると、島に生えている新芽が「太陽さん、怪物さんを助けておくれ」と太陽に話しかけてくる。
そんな新芽は怪物のことを“命の恩人”だと言い、怪物の過去を話し始める。語られたのは、怪物の知られざる優しい一面だった――。
大切な友達のために行動する怪物の話に、SNS上では「人生の教訓」「怪物の優しさに泣ける」「誰かにとっての“いいこと”は、また誰かにとっては“害”だったりしますよね」「とても良い話」「ぜひ絵本になってほしい」などのコメントが寄せられている。
作画の際のこだわりは「2Dと3Dの間を目指しています」
――『太陽を食べてしまった怪物』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
気分転換にメモ帳に落書きをしていたのですが。そのラクガキというのが怪物でした。思ったよりも可愛く描けたので、お話を妄想していたら、いつの間にか物語として転がっていきました。それもあって「太陽と怪物」の背景はメモ帳みたいな罫線があったりします。
――本作では、怪物の優しさあふれるシーンが非常に印象的でした。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
私は強者や悪物とされているキャラクターから溢れる、弱さや優しさが好きみたいでして。ギャップと言いますか。カテゴライズされているキャラクターの二面性と言いますか。本作ではそれぞれのキャラクターの弱さと強さを対比させて描いています。その辺りに注目してもらえたら嬉しいです。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
冒頭の、怪物がバクっと太陽を食べるシーンがお気に入りです。始まり方として印象的ですし。太陽を食べる怪物がかわいいからです。冒頭なのでよりキャラクターがデザイン的なのも好きなポイントです。
――普段作品のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか。
過去の自分に手紙を書くように、物語を考えています。まず前提として、自分という人間を理解してくれる人などいないと思っています。それは自分も含めて。だからこそ理解したいと願います。物語とは自分を…ひいては人間を理解しようとする行為です。だからこそ私はいつも「モンスター」の心の機微を捉えようと描いています。自分という異物、自分というモンスターの心を動かすにはどうしたら良いのか。それを指針に着想を練っています。
――したら領さんの作品は、人の心を動かすような強いテーマ性を感じます。作画の際にこだわっていることや、特に意識していることはありますか。
テーマ性が前に出過ぎないように気をつけたいと思いながら。気づくとつい説教臭くなってしまいます(笑)。でもそれはそういった教訓的な、社会風刺的な物語が好きだからだと思います。だからこそ作画やキャラクターデザインに関しては、なるべくファンタジーと言いますか、リアル過ぎない…けど魅力的な絵を目指しています。2Dと3Dの間を目指してもいます。
――今後の展望や目標をお教えください。
現在私は、読者さんやファンの方々に支えられて、漫画家生活を成り立たせています。今は生活するので精一杯くらいのお金ですが。その基盤をもっとしっかりと揺るがないものにして、命が尽きるその日まで物語を描いていたいです。そして読者さんをたくさん増やしてオリジナルの図書館を作りたいです。自分の好きな本や映像だけが並んでいる図書館。さらにそこに並ぶ作品たちに負けないくらいの作品を継続的に創れるような作家になって、その図書館にしたら領のコーナーを作りたいです。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
いつもありがとうございます!主人公がしんどい目にあいがちな私の作品ですが。最後まで読めば何かが届くように描いているつもりです。ぜひ最後までお付き合いいただければ嬉しいです。感想もいつも楽しみに読ませてもらってます。読者であることを誇れるような作家になれるよう励みます。