座組の在り方を学んだ“ツキステ”
――4月1日(月)放送の月曜プレミア8『今野敏サスペンス 警視庁強行犯係 樋口顕 -炎上-』や2024年初夏公開の映画『THIS MAN』にもご出演される校條さんですが、映像作品ならではの面白さはどんなところにあるでしょうか。
表現の軸をイメージしたときに、そこに足していくのが舞台で、引いていく表現をするのが映像という、アプローチの仕方が真逆なんですよね。舞台では間があったら埋めなきゃいけないという思考になりますが、映像ではその間も芝居のうちになる。舞台では“やる”という方向に入れてきた力をすべて抜かなきゃいけなくて、難しくもありますが、でもそれが不思議と面白いなと感じています。
――これまでの俳優人生の中で、ターニングポイントだと感じている出来事があれば教えてください。
僕は作品でご一緒する方たちのお芝居にはあまり干渉しないようにしてきました。というのも、基本的に他の俳優さんへのお芝居に何かを言うのは演出家さんがすることだからと思っていたんです。でも、2.5次元ダンスライブ『ツキウタ。』ステージに出て、作品の中で作られたチームのリーダーをやっていたとき、何かできないことがあると、それはチームの連帯責任=リーダーの責任だと言われることがあって。
当初は「どうしてそうなるんだ」と思うこともありましたが、シリーズものとして作品が続いたこともあり、チームに愛情も芽生えて、みんなで作っていくものなんだと感じるようになりました。それこそ、先ほどお話した座組によって対応を変えるという考え方をするようになったのも、この“ツキステ”がきっかけでしたね。
“俳優としての究極体”を感じた憧れの俳優
――では、これまでに、特に影響を受けた俳優さんや作品はありますか?
誰もが知る、役所広司さんですね。映画『すばらしき世界』(2020年)を観たときに、とても衝撃を受けました。役所広司さんは、役を演じているはずなのにどう頑張ってもお芝居には見えないほど、本当にその人物として存在しているんです。芝居をするけど、芝居をしていないというか。役者はそうあるべきだと、ずっと頭では考えていましたが、役所さんの演技こそがそれなんだと、この作品を観て実感しました。
誰かのお芝居を観てそう感じることは初めてだったので、観終わったあとにすごく興奮したのを覚えています。僕も絶対にこうなりたいと強く思った瞬間でした。
――俳優として理想とする姿がそこにあったんですね。
俳優としての究極体だと思いますね。作品を観ている人が、役所広司さんが演じていることを忘れるほど作品に溶け込んでいるということだと思いますし、だからこそ自然と観る側も作品の世界に入り込むことができる、そして作品の細部までを心で感じられるんだろうなと。役者は自分を見せるわけではなく、作品を届けることが仕事なので、まさにそれを体現していると思いました。
――最後に、プライベートでの過ごし方を教えてください。
オフの日はまったく家から出ません。猫を3匹飼っているんですが、猫ってキャットタワーなどの縦運動で大丈夫なので、毎日散歩をしなくていいですし、ご飯も朝お皿に入れておくと自分たちで必要なときに必要な分だけ食べてくれる。だから、時間が不規則な生活をする役者と共存できる存在だなと思っています。
それで、家にいられるときには、ずっと猫と一緒です。朝起きてご飯を食べて、おなかいっぱいになったらまた眠くなるので、3匹のうちの誰かを「今日はお前だ!」といって1匹連れて一緒に寝るという過ごし方をしています(笑)。
◆取材・文=榎本麻紀恵
撮影=岡本武志
スタイリスト=世良啓
ヘア&メーク=太田夢子
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