長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『ザ!世界仰天ニュース』(毎週火曜夜9:00-、日本テレビ系)をチョイス。
不安とのお付き合い『ザ!世界仰天ニュース』
『ザ!世界仰天ニュース』、そういえばちゃんと見るのは10年以上ぶりかもしれない。しかし、この『身近な危険傑作選』は、おそらく再現VTRの総集編のようなもので、スタジオは映らずワイプもないので、正規の放送回とは別枠だと思われる。それにしても、”身近な危険傑作選”とは大きく出たものだ。身近な危険に傑作もなにもないだろうと思うが、私の記憶している”見世物性”はまだまだ健在なのだと分かり思わず笑ってしまった。
さて、番組内では様々な”身近な危険”が紹介され、多少コミカルなものから、結構マジの危険まで、非常に興味深く見ていられる。なによりも再現VTRの老舗番組(少なくとも私はそう捉えている)であるから、磯山さやか、狩野英孝、あのちゃん等、有名タレントが主演を務める豪華なものとなっていて、豪華すぎて「再現VTRをこの人がやります!」というアピールまで入ってくる。ちなみに、磯山さやかの夫役としてゆってぃも出演していたのだが、なぜだかまったく触れられていなかった。別人だったのかもしれない。
ところで私も、”身近な危険”にほとほと困らされているひとりだ。たとえば、私はエアコンの下で寝ることができない。頭に落ちてきたら死ぬからだ。窓の近くでも寝ることができない。頭に倒れてきたら死ぬからだ。引き戸の近くでも寝ることができない。頭に倒れてきたら死ぬからだ。冗談ではなく、このようなことを本気で考えている。毎日、毎秒、死の危険と戦っている。部屋のレイアウトも、オシャレさや便利さなどではなく、”死ななさ”を最優先に構築していくこととなる。私はまだまだ20代、洒落た部屋に住んでみたいと常々思っているが、ポパイに載るには命を投げ捨てなきゃならないわけだ。
エアコンが落ちてくる確率は一体どれくらいだろう。引き戸が倒れてくる確率は?冷蔵庫がひとりで倒れてくることはありえるだろうか?そんなの、気に留める必要もない些細な数字のはずだ。頭ではわかっているのに、不安が全身から離れてくれない。こんなのは嫌だなあ、然るべき治療を受けようか、とも思うのだが、しかし、私のこの性質のおかげで命が助かる可能性もある。この性質を失ってしまったら、本来なら避けられていたはずの何かを頭にくらってすぐに死ぬということにもなりかねない。私はともかく死ぬのが怖いのである。
今回の『身近な危険傑作選』で私の不安をくすぐったのは、海の浅瀬でエイに毒針を刺されたという少女のエピソードだ。脚を貫通し、さらには、毒により腫れあがって、壊死のリスクまで負うことになったという、恐ろしい話である。ただ海の浅瀬を歩いただけでこんなことになってしまうのだ。やはり、不安という痛覚は必要であるかもしれない。不安は、うまくお付き合いできれば、それなりの関係にはなれるのかも。辛抱強く互いを知っていくことにしよう。