キャスト陣の見応えある演技が続く
龍太郎が目下、政界において対応するのは、丸山と丸山の弟・政志(中野英雄)のことだ。女性スキャンダルという政志個人の不祥事と、政志の会社を隠れ蓑に丸山の総裁選に絡んだ票集め。それを指摘するときの大の大人がびびってしまう静かなる恫喝に、フィクサーとして暗躍してきた力が示される。
同時に龍太郎は長男・一郎の問題にも対応。愛人に夢中な一郎の妻・沙帆(柳英里紗)に離婚を勧め、沙帆の父・イサム(長塚京三)に報告と詫びに出向く。イサムは会話から大物政治家らしき雰囲気が漂うのだが、この田中と長塚の対峙シーンがシビれるかっこよさだ。
問題の一郎は、父の期待に応えることもできず、弱々しいのに愛人への気持ちが止まらない。その一郎を体現する安藤の演技のうまさでヒヤヒヤする。また、無職になるも家族を支えるというプライドがある夫・昌弘(結城貴史)に振り回される弓子の優秀さが垣間見えるところと、こりもせず弓子に秘密裏に動く昌弘の不穏さがうごめく。
そんな中で、歌手を夢見る理紗子が自分で作詞作曲した歌を披露する機会を得るのだが、演じる中田が普段の声とは違い、歌となるとちょっとハスキーで、なんとも趣ある感じが複雑な展開に彩りを添える。
そして龍は、恋人でジャーナリストのサラ(ハイディ・バーガー)と真実に向かって調べを続け、父・龍太郎の存在に気づいていく。
龍太郎と龍の“正義”の行方をベースにした巧みな構成
第9話で「何かがおかしい」「私の知らないところで何かが起こっている」と龍太郎が感じて、物語が一気に動き始める。エグゼクティブプロデューサーであり、脚本も担当するデビッド・シンが仕掛けた面白さがグッと吸引力を増す。
政界の動きと、龍太郎の家族の動き。複雑に映し出されてきたものが、ポツポツと結びついているかもしれない予感はドラマ好き、サスペンス好きであれば心のどこかで常に抱いているものだろうが、それ以上にアッと驚くことが起きる。
圧倒的存在感を放つ田中と新田がけん引するキャスト陣の熱演と相まっての盛り上がり。ここまでに詳しく紹介していないキャラクターが数名いるのだが、彼らを含めて重厚感ある雰囲気が作り上げられている。第9話ラストから最終話は、本当に怒涛(どとう)といえる展開だ。あなたも、あなたも、あなたも…と、多くのキャラクターに驚がくするはず。フィクサーが必要だった世界の恐ろしさも。
龍太郎と龍の正義がどうなるのか。最後の最後まで「えっ」となるストーリーに引き付けられるに違いない。
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◆文=ザテレビジョンドラマ部
https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/house-of-the-owl/
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