日本の“すごいサイエンティスト”を応援する番組「いまからサイエンス」(毎週水曜よる10時~、BSテレ東)。加藤浩次がMCを務め、各分野で活躍する科学者・研究者をゲストに迎えて科学技術についてやさしく解説をおこなっている。各技術の開発秘話はもちろん、ゲストの人柄までわかるようにトークで掘り下げていく同番組。2024年3月27日からは「いまからサイエンス」へ名前とセットを大きく変えてリニューアルし、さらに科学について深く掘っていく。番組リニューアルから1カ月ほど経った現在、「いまからサイエンス」のなかで伝えたいこと、番組の魅力などについて、MCの加藤浩次から話を聞いた。
科学とは「我々の生活がもっと豊かになる“種”」という気づき
――番組タイトルが「いまからサイエンス」に変わってリニューアルされてから1カ月くらい経ちましたが、どういうところが変わりましたか?
番組の内容自体は何も変わってないんですよ(笑)。セットがかなり変わって、バーチャルになりました。変化というと、そこですね。
――番組名が変わる前の「居間からサイエンス」がレギュラー放送になったのが2023年の4月なので、そこからでも1年以上経ちます。“科学”に関して得た知識も多いと思いますが。
そうですね。毎回毎回勉強になります。この番組の特徴であり、良いところとして言えるのが研究者の方がゲストとして来てくれることです。識者のなかには現在は研究をされていない方もいらっしゃいますが、この番組に来ていただいている方は、現役の研究者なんです。その分野の最前線で活躍されている方たちなので、話していただく内容が最新のもので、最先端のものなんですよ。
――“科学”は範囲も広いですが、各分野で日々研究が続けられているので、情報も刻々と更新されていると思いますから、最新のものが知れるというのは大きいですね。
まさに、研究対象も身近なものから宇宙とか壮大なものまでさまざまで、知らないことがいっぱいあるんだなと改めて感じます。いろんな分野に分かれていて、皆さん好きなことを研究されていて。思ったのは、日本の基礎研究とかって意外とすごいのに知られてなかったり、過小評価されていたりするんだなって。そういう基礎研究にこの番組を通してスポットライトが当たればいいなとも思っています。
――そういった研究が、後々商品化されたりして、日常で使うものになったりすることもあると思いますし。
そうなんですよね。まだ一般企業に落とし込んでいない、研究段階の話をこの番組でたくさん聞かせてもらいました。それらの研究によって後々商品になったりすることを想像するだけでも楽しいんです。
そういうふうに「この研究、面白いなぁ」という感じで見てもら得たらいいなと思いますし、例えば、株とかをやっている人は「この分野の研究が進んでいるんだったら、それ系統の会社が今後利益を増やしていくんだろうな」というふうに見ることも可能ですよね。経済と科学って実は密接なものなんだなということも、この番組をやっていて気づいたことです。
――科学は遠い世界の話ではないという感覚で。
「科学って自分とはあまり関わりがないこと」とか「頭のいい人がやってること」とか、そう思っている方もいらっしゃるかも知れませんが、自分たちの生活に直結している研究が意外と多くて、我々の生活がもっと豊かになる“種”のようなお話を皆さんされているんです。そういう目線で見てもらいたいですね。
――今、この番組で見ていた研究が何年か後に実用化したら、「あの時に見たのが」というふうに思い出せそうな気がします。
この番組に出ていただいた研究者の方のなかから、将来、ノーベル賞受賞者が出て欲しいですね。ノーベル賞レベルの方たちが来てくれているので、全然夢とかではない話だと思うんです。番組を見てくれてる方が何年後かに「あ、あの人、ノーベル賞取ったんだ!」ってなると思いますよ、きっと。
最前線の研究者に共通する子どものころの“趣味”
――この番組を見る楽しみ方がいろいろありますね。
皆さん、すごくわかりやすく話していただくので、毎回収録が楽しみなんです。新しく何かを知ることって楽しいじゃないですか。ここで知った知識を、誰かと会ったときとか、飲み会での話のタネにしてもいいですし、そこから会話も広がりそうだなって。ニュートリノの研究者の方の話のなかで、原子と原子核のことが出てきたんです。
――理科や科学の教科書とかに図で載ってたりするやつですよね
そうそう。原子が東京ドームくらいの大きさだとしたら、原子核はヒマワリの種くらいの大きさなんですって。僕らが習ったとき、教科書とかに載ってた原子核ってもっと大きかったですよね?
――比率的に、東京ドームとヒマワリの種ではなかったです。
先生が「イメージとしてわかりやすく表現するために原子核を大きくしているんだと思うんですけど、実際はそれくらいの大きさです」って言われて、今まで自分が思っていたものが全然違ってイメージを覆される感じがしました。自分のなかの常識が覆されるのは、それはそれで楽しいものだなって(笑)。
――昨年放送された廣瀬敬教授の「地球の内部構造」に関する回が「第65回科学技術映像祭 文部科学大臣賞(研究・技術開発部門)」を受賞されましたが、これもやっぱり視聴者の方も含め、多くの方が興味深く見ていたからだと思います。あの回も新しく知ったことが多かったのではないですか?
宇宙のこととか、知らないことがまだまだいっぱいあるんですけど、あの回で思ったのは、自分たちが住んでる地球のこともまだまだ知らないことだらけなんだなってことでした。衝撃的だったのは、人類史上、どこまで深く掘ったことがあるか?ということ。これも勝手なイメージですけど、富士山の高さくらいとか、いや、もっと深く掘れてるだろうとか思ってたんですが、12kmですよ!全然掘れてないんじゃん!って(笑)。12kmなんてその辺ですよ。歩いても行ける距離ですよ!
――それはそれで意外な事実として衝撃的です。いろんなテーマを取り上げてこられてきてますが、特に印象に残っているものは?
挙げ始めると全部なんですけど、最近の放送でいうと「量子コンピューター」の回も面白かったです。次世代を担うコンピューターと言われていて、これがどんどん世の中に広まっていったら全然違う世の中になっていくんだろうなって。そういうのを実際に目にすると興奮します(笑)。
――加藤さんはいろんな番組に出演されていますが、この番組でしか会えない方と話せるのもいいですよね。
はい。それが、この番組をやってて良かったなって思えるところです。科学者の方と話してて気づいたことがあるんですけど、皆さん、子どもの頃に昆虫採集が大好きだということ(笑)。ビックリするくらい、皆さん、揃いも揃って昆虫好きです。なので、お子さんが昆虫が好きで昆虫採集をしようとしていたら、「やめなさい!」って言うんじゃなく、どんどんやらせてあげてください。素晴らしい科学者になるかも知れませんから。
――昆虫などの“生命”に興味を持って、そこがきっかけで興味の対象が広がっていくんでしょうか。
そういうことだと思います。好きなことをきっかけにして研究するようになっていったんだと思いますし、何よりも皆さん、楽しそうなんです。研究を楽しんでいるのが話を聞いていて伝わってきます。
――この番組を見てみようかなと思っている方に向けて、番組の楽しみ方などを教えてください。
ちょっとわかんないことがあっても、この番組を1時間通して見ていただけたらわかるようになると思います。もしくは、「わかんないな」って思ったとしても、「わかんない」ということがわかることも重要だと思うんです。この番組の良さは「わかった」と思える瞬間がたくさんあること。学生のときも、新しいことを知ったときって楽しかったじゃないですか。ぜひ若い方からお年寄りの方まで楽しみながら見ていただきたいなと思います。
◆取材・文=田中隆信
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