本宮泰風と山口祥行のW主演による任侠作品「日本統一」。横浜の不良である氷室蓮司(本宮)と田村悠人(山口)が日本最大の任侠団体である神戸「侠和会」の盃を受け、日本極道界統一を目指して奮闘する姿を描いたシリーズで、現在シリーズは63作、「日本統一外伝」が14作、連続ドラマが2作に加え、劇場版も製作されるなど空前の人気を誇るコンテンツだ。そんな人気シリーズより、「日本統一 関東編 ノーカット完全版」がLeminoで配信されている。今回は、同作に捜査一課の刑事役で出演する劇団EXILE・青柳翔の演技を中心に、作品の魅力を紹介する。
「日本統一 関東編」とは
ドラマ「日本統一 関東編」では、日本の頂点を目指して関東に進出した侠和会がある事件をきっかけに巨悪組織に立ち向かう様子を描く。侠和会八王子支部の電話番を務めていた小倉(三浦マイルド)が絞殺死体で発見される。八曲署内で身元を確認した田村は、敵対するヤクザの仕業だと決め込み、報復を誓う。一方、氷室は署内の裏で、捜査一課の刑事・島(青柳)と早見(藤原樹)が多発する殺人事件に愚痴をこぼしているのを耳にする。小倉の件がヤクザの仕業であることを訝る氷室は、山崎一門の面々に最近起きた未解決の殺人事件を探るよう指示する、というストーリー。
同作の見どころは、警察と同時進行で事件を捜査する侠和会の“任侠団体だからこそ無茶ができる”というシーンを通して、「本当の悪とは何か?」「コンプライアンスなど社会のルールにがんじがらめにされることで物事がスムーズに進まなくなっている」といった現代社会に対するメッセージや問題提起が込められているところで、そのメッセージに説得力を与えているのが青柳演じる島刑事の存在だ。
というのも、物語では侠和会の面々がドラマ「西部警察」よろしくあだ名で呼び合いながら捜査を進めていくのだが、かなりコミカルな演出がされており、強面俳優たちのおちゃめな場面がふんだんに盛り込まれていて、思わずくすりとさせられてしまうほど。そんな中で、島刑事は真面目に警察ができる法律の範囲内で真っすぐに捜査に当たっており、侠和会とのコントラストを色濃くしているからだ。
島刑事は、警察官の父親の元で育ち、ヤクザ絡みの事件で父親を亡くしており、ヤクザを恨んでいるという背景があり、捜査に関しても法は犯さないようにしているというキャラクターなのだが、青柳は島の心の内にある信念と凝り固まった考えにもがく姿を、10話を通してしっかりと描写。その“島の心がほぐされていくさま”が、視聴者に向けたメッセージに説得力をもたらしている。
物語にリアリティーを付与する青柳の演技
島を演じるに当たり青柳は、最初こそ“真面目で正義感が強い”という印象を残しつつ、捜査が暗礁に乗り上げる一方で侠和会が真相に近づいていくと“悲しい過去から生まれた信念に妄信する姿”をのぞかせていき、最後は“侠和会との共闘の道を選択する”という心の変化をグラデーションで表現。役者として演じるに当たり、何かの大きなきっかけによって考え方や心情を変えるというのはそこまで難しくないが、“順撮り”ではないドラマの制作現場で「だんだんと変化していく」というのをしっかりと表現するのが最も難しいといえる。しかし青柳は、この「だんだんと変化していく」グラデーションの演技で、ゆっくりとだが確実に変わっていく島を演じて、物語にリアリティーを付与している。
強面俳優たちのおちゃめなシーンが目を引く中で、青柳のグラデーションの演技に注目すると、より作品の深みに触れることができること請け合いだ。
◆文=原田健