コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、「生活保護に対する理解を広めてくれる」と話題の人気作品「東京のど真ん中で、生活保護JKだった話」をピックアップ。
作者の五十嵐タネコさんが5月28日にX(旧Twitter)で同作を投稿。そのツイートには合わせて8000以上のいいねと共に、多くの反響コメントが寄せられた。この記事では五十嵐タネコさんにインタビューを行い、創作のきっかけやこだわりについてを語ってもらった。
都内で生活保護を受給していたJK
五十嵐タネコさんが高校生の頃、生活保護を受給し、行政に助けられ、生活保護を卒業するまでの物語…。
元々、五十嵐さんのお父さんは大卒のサラリーマンでそれなりの暮らしをしていたのだが、37歳の若さで癌が発覚。勤めていた会社からリストラに遭い、失業。当時は大不況で再就職もできず、五十嵐さんの貧困生活が始まった。
いよいよ貯金が尽きると、お父さんは「生活保護」を受給しようと決意する。しかし、生活保護を受給したからといって生活が激変することは無かった。
風呂なし、和式トイレ、トタン張りの木造アパートで4人暮らし。お風呂は週に1回で洋服は親戚から貰うお下がり。夜ご飯はサンマ1匹を4人で分け合うことも。そんな貧困生活を、五十嵐さんは様々な工夫を凝らして乗り越えていく…。
生活保護の実態が漫画によって分かりやすく描かれている本作。読者からは「生活保護に対する理解を広めてくれる」「なんてためになる漫画なんだ」「感情移入してしまった」「本当にすごいと思う」など多くのコメントが寄せられている。
「人生を諦めなくていいんだよ…」作者・五十嵐タネコさんが語る創作秘話
――「東京のど真ん中で、生活保護JKだった話」を執筆したきっかけや理由があればお教えください。
あるインフルエンサーの方による、生活保護やホームレスの方に対する差別的な発言が話題になったことがきっかけです。生活保護に関しては、どうしても昔から不正受給などのマイナス面だけが注目されることも多く、厳しい風潮や偏見も少なくありません。
ただ私自身は、生活保護制度のおかげで自立することができて人生が救われました。マイナス面だけではなく、そういったケースもあるという、生活保護のリアルな実態を伝えたいと思い、今回筆を取りました。
――本作の中で特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
「お年玉と自転車」の話は、大人になってもずっと根に持っていた件なので、とても感情がのっているエピソードになっています。たくさんの方から「うちもそうでした!」「これはひどい!」などの共感のお声をいただけたおかげで、長年の恨みが成仏できました。(笑)
中学からの親友や区役所職員の柳さんとの話を描いた「ボランティアで得た大切なもの」も気に入っています。この出会いに恵まれたおかげで今の私があると思っているので、感謝の気持ちを精一杯込めた大切なエピソードです。
――「素晴らしい話」「ためになる漫画」など大きな反響がありましたが、コメントを読んだ時のお気持ちをお教えください。
本作の発表にあたっては批判的なご意見もたくさん来るだろうと想定していたのですが、「生活保護家庭のイメージが変わった」「逆境でも前向きに頑張る姿に励まされた」などの好意的な感想を多くいただき、とてもありがたくて嬉しかったです。
「同じように貧困家庭だったけど、自分だけじゃないと知れて勇気が出た」など共感のお声をいただいたときは、この作品を描いて良かったと心から感じました。「出前とか贅沢し過ぎじゃない?」などの反応もいただきましたが、それは私もそう思います。(笑)
生活保護の実態についてとにかくもっと知ってもらいたい、という気持ちが強くあったので、どんな感想コメントも本当にありがたいですし、ひとつひとつ本当に嬉しく読ませていただいています。
――本作を通して伝えたいメッセージがあればお教えください。
生活保護制度は、日本国民全員に認められた真っ当な権利であり、国民の生活を守る大切な制度なので、支援が本当に必要な方には、後ろめたく思うことなく胸を張って利用してもらいたいと思っています。また、私と同じような貧困の子どもたちには、人生を諦めなくていいんだよ、と伝えたいです。
日本の行政の仕組みは、みんなが思っているよりも優しい面がたくさんあります。支援制度もたくさんあります。せっかくこの国に生きているのだから、活用して欲しいと思いますし、活用しやすい社会の空気になるといいなと願っています。
――今後の展望や目標をお教えください。
私と同じように、貧困を乗り越えられた方の体験談を漫画化してみたいなと思っています。貧困の最中にあると、自力では出口が見つけられなくて絶望的な気持ちになってしまうことがありますが、そんな中、貧困を抜けた経験者の体験談が支えや励みになるかもしれない。
私もそうだったように、漫画って、苦しい状況の中にある方にも比較的届きやすい媒体だと思っています。漫画を通して、誰かひとりでもそういう方の助けになれたら、こんな嬉しいことはないですね。
――最後に、作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いいたします。
本作を読んでくださり、本当にありがとうございます!いただいた感想ひとつひとつがとても励みになっています。
今後は引き続きエッセイ漫画を描きつつ、創作漫画にもチャレンジしようと思っています。楽しく読めて学びにもなるような漫画をこれからも描いていきたいと思っているので、是非また読んでいただけたら嬉しいです!