人気アニメ「映画クレヨンしんちゃん」シリーズ第31弾となる『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』。本作で主人公・しんのすけたちと行動を共にする生物学研究者ビリーの声を担当するのが俳優でアーティストの北村匠海。メガホンをとった佐々木忍監督が、北村をイメージしてキャラづくりをしたというビリー。北村は演じる上でどんな思いを抱いたのか、声優業への向き合い方や、自身の未来予想図について熱い気持ちを吐露した。
最近ひろしやみさえの気持ちになっている
本作の舞台は、現代に恐竜をよみがえらせたテーマパーク「ディノズアイランド」。しんのすけやその仲間「カスカベ防衛隊」はパークへの見学ツアーに出向き、大迫力の恐竜たちを満喫するが、そんな恐竜たちがパークから脱走してしまう。一方で、しんのすけや愛犬シロ、そしてカスカベ防衛隊は、ひょんなことから出会った小さな恐竜ナナと交流を深めていくが、恐竜たちの脱走によってナナの秘密が大きなカギを握ることになる、という物語だ。
――本作のオファーを受けたときはどんなお気持ちでしたか?
監督が僕をイメージしてキャラクターを作ったうえでオファーをしてくだったというのが、とてもうれしかったです。僕自身も子どものころから「クレヨンしんちゃん」には触れてきていて、個人的にも家族としても思い出がありました。そんな作品にまさか明確に僕を意識したキャラクターを登場させてくれるなんて、二つ返事で「お願いします」という気持ちでした。
――北村さんを当て書きしたようなビリー。演じていて腑に落ちる部分は?
ビリーは子どものころから恐竜の研究を熱心に行ってきた人。僕は8歳から役者をやっていて、好きで続けてきたのでリンクする部分はありました。1つのことを好きでい続ける情熱、そして家族やナナに対して、愛情だけではなく優しさを持って接する部分も自分とすごく似ているなと思いました。
――何かアフレコのときは意識されましたか?
僕をイメージして作られたキャラクターということだったので、さらに深く読み解いて役を膨らませてしまうと邪魔になると思ったんです。なので今回は監督の求めていることに対して100%で答えるには、素の僕で行こうということは考えていました。
――子どものころから「クレヨンしんちゃん」に触れてきたとのことですが、思い出に残っている作品は?
僕のなかでは『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 栄光のヤキニクロード』(2003年)が1番印象に残っている作品です。完成披露試写会でも話をしましたが、あの映画で骨付きカルビの存在を知ったんです(笑)。でも今回作品に参加させていただくことになり、久々に『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001年)を観たんです。
子どものころはあのストーリーに対して「なんでだよ!」と思って観ていたのですが、改めて作品を観て、ひろし目線な自分がいたんです。だんだん僕もひろしやみさえの気持ちになっているんですよね。そこが「クレヨンしんちゃん」の魅力というか、大人から子どもまで愛される作品なんだなと実感しました。
声優の仕事を重ねても、絶対に“慣れ”は持たない
――アニメで声を担当する作品も重ねてきましたが、慣れてきたなという思いはありますか?
僕はいつまでも“慣れ”は持たない方がいいと思っています。声優さんって職人の集まりだと僕は思っているんです。僕ら俳優は、普段生きているとき感じるニュアンスを全身で表現できるし、目線1つでも伝えられる。でも声優さんって声だけで伝えなければいけない。それは簡単に身につくことではないと思うんです。だからこそ、リスペクトを含めて、僕はずっと慣れないでいることが大事だな、と。
――「初心忘るべからず」ということですね。
以前に、声優の梶裕貴さんとドラマの現場で一緒になったことがあって、その際、現場でとても謙虚に撮影に臨んでいる姿を見ました。僕もそうあるべきだなと思って撮影に臨んでいます。
――それでも声優という仕事の魅力は感じていますか?
どんどん増しています。僕は純粋にアニメが好きですし、憧れの世界なので…。いまありがたいことに役者の仕事をさせていただいているので、ワクワクを忘れないようにという思いを持っているのですが、声優の仕事というのは俳優業と音楽との融合体のようなイメージがあるので、どこまで引き出しが増やせるか…という意味ではとても魅力的です。
――アーティスト活動と声優業はリンクしていますか?
そうですね。マイクの前に立って声を収録するというのは、音楽のレコーディングと似ているところはあるのかなと。今まで自分がやってきたことが、声優に生きるタイミングもありますし、声優を経験したことで、レコーディングでマイクの前に立ったときに新たに感じる気づきもあります。